
「時光代理人 -LINK CLICK-」とは?
中国の澜映画(ラン・スタジオ)制作によるアニメーション作品。現在Webアニメとして中国の動画共有サービス「bilibili」と、その国際版「BiliBili」にて配信されている。日本ではソニー・ミュージックソリューションズおよびアニプレックスにより日本語版(ローカライズ版)が制作され、地上波などで放送された。どちらも現在シーズン1と2が存在している。
あらすじとしては、超能力者である主人公の「程小時(チョン・シャオシー:日本語版での愛称は「トキ」)」と、その親友(というより共同経営者)である「陸 光(ルー・グアン:日本語版における愛称は「ヒカル」)」が、お互いの能力を生かして人助けするお話になっている。
トキは写真を通し、その撮影者の過去の意識に憑依する能力を持ち、ヒカルは写真を通し、写真撮影後12時間以内の出来事を読み取る能力を持つ。二人は「時光写真館」という写真館を経営し、そこを訪れるお客さんたち(過去のしがらみを解けない人々)から写真を受け取り、その能力を発揮して彼らの悩みを解決している。
トキは写真にダイブできるが、ただやみくもに撮影者の意識にリンクするだけでは、問題解決の糸口は掴めない。そこにヒカルの過去透視能力が加わることで、強力な時間管理能力へと変貌するのだ。彼らはクライアントに代わって過去を体験・認知することで、彼らが抱える後悔などを解消するお手伝いをしているわけだが、その気になれば過去を変えることすら可能な危険な能力であることは自明の理であった。
トキとヒカルは自分たちへの戒めとして、「過去を問うな、未来を聞くな」というスローガンのもと、「絶対に過去の改変をしてはならない」というルールを堅く守っていた。しかしルールは概して破られるもので……。さまざまな人物の思惑のもと、二人は知らぬ間に奇妙な事件に巻き込まれていく。
俺にとっての「時光代理人 -LINK CLICK-」
以前こちらやこちらの記事で、俺が自称「スーパー・アニメ・オタク」であることをお伝えしたが、何も視聴対象は日本のアニメだけに留まるわけではなく、主にアメリカや韓国、そして中国のアニメも好んで視聴している。そのなかには突出した魅力を持った作品がいくつもあり、今回紹介する「時光代理人 -LINK CLICK-(以後「リンククリック」と呼ぶ)」もその一つである。
本作は主に人間ドラマを描いたシリアスな作品であるが、コミカルなシーンもバランスよくあり、何よりもその”見せ方が上手い”作品である。秀でた音楽や演出、アニメーションからもたらされる没入感は癖になり、特にアクションシーンの迫力といったら、素晴らしい出来である。なので中華アニメは他にも良作がたくさんあるが、俺は現時点ではこの作品をナンバー1に推している。
挿入歌「Keep In Mind」について
リンククリックは現在シーズン2まで存在し、今回の本題である「Keep In Mind」という挿入歌が流れるのは、シーズン1の後半――クライマックスのシーンである。そこでは「エマ」という第一期のキーパーソンとなる女性が、会社の上司から受ける執拗なパワハラ・セクハラを苦に、ついには飛び降り自殺しようとしてしまうのだ。偶然(あるいは必然か)居合わせた主人公のトキが、説得して彼女を救おうとするのだが、そのシーンが……もうマジで泣けるのだ。
そのオリジナル音声版の映像がこちらだ。中国語なのでセリフの意味は聞き取れないだろうが、トキはエマに対し、これまで写真にダイブして出会ったさまざま人物のことを伝えていく。「いろんな人がいた。いろんな人生があった。でもみんなそれぞれの人生を一生懸命生きていた」と……。気になった人はぜひ日本語版の本編を見てみてほしい(涙)
ともかく、このBGMとして流れている楽曲が今回の主役「Keep In Mind」である。このシーンはインストゥルメンタル(歌なし曲)でも充分に感動的なものになっただろうが、こんな第一級の泣きメロソングを挿入されたのでは、それは目から心の汗が流れ出るのを抑えられなくもなる。
ちなみに、こちらは第二期のキーパーソン「ティエンシー」ちゃんをトリビュートした動画で、楽曲の音声をそのまま聴くことができる。ティエンシーちゃんというのは、とても複雑なキャラクターで、実のところ先のエマを……うっ、これ以上は俺の口から言えない(号泣) ただ俺は二人とも大好きだー! おぉ神よ、頼むから二人のことを「お家⌂」に帰してあげてくれぇぇぇぇぇぇ!!
――ご、ごほん! と、ともかくとして、今回はこの「Keep In Mind」の英語歌詞を日本語に訳してみたので、それを掲載したいと思う。ただこの歌、物凄く難解で、ただ英語を直訳しただけだと、かなり意味が分かりずらい(詩的すぎる)のだ。だから今回の訳は、俺なりの解釈を交えた”意訳”である点をあらかじめご理解いただけると嬉しい。それではどうぞ。
「Keep In Mind」の日本語訳付き歌詞
[Verse 1]
I can't breathe through the air (空気はあるのに息ができない)
I have dreamed despair (絶望を夢見ていたんだ)
I have been lost, I have gone way above my head (道に迷い、自分の理解できないところまで来てしまった)
I've been drawn to this sensation (この感覚に惹かれてたんだ)
Give in to my existence and now (自分の存在にすら屈した今の僕を)
Who will save me? (いったい誰が救ってくれる?)
I'm drowning (Is anyone out there?) (僕は溺れているんだ)(誰かそこにいるの?)
[Verse 2]
I believed in everything (何もかも信じていた)
I have lived seven sins (七つの大罪も犯してきた)
I have my doubts but they would've never mattered anyhow (疑問があるのに、答えを知りたいとすら思わない)
When the stories hеre are written (物語が書かれればどうせ)
And truth's all forgottеn (真実は忘れ去られるから)
I was another victim of everyone else (僕は彼らにとっての次の犠牲者だったんだ)
[Pre-Chorus]
Awakened every night (毎晩目覚めると)
Surrounded by the devils (いつも悪魔に囲まれている)
I saw the shadows taking my life (影が僕の命を奪っていくんだ)
[Chorus 1]
How could I find myself (どうすれば自分自身を見つけられる?)
Trapped in these broken shells (こんな壊れた殻に閉じ込められて)
A world that has taken sunlight (希望の光が潰えた世界はね)
And stolen the fight from my fist held tight (僕の拳から闘争心すら奪うんだ)
So long is the night (夜はこんなにも長いのか)
I will Keep In Mind (心に留めておくよ)
To live so that I can find (たくさんの痛みを乗り越えたんだから)
The path where I took all the pain (またその方法を見つけられるってことを)
And still walked away with a true heart (それが本心だから、この死の淵から去るよ)
I've known it all the way (これまでだってそれを、ずっと知っていたんだ)
[Verse 3]
I have lied in every way (あらゆる点で嘘をついてきた)
Because the truth always turned you away (だって真実はいつも君を遠ざけるから)
[Bridge]
When my friend are holding hands
Heading into abyss (友達が苦しみに耐えながら深淵に向かっているとき)
I ran my lungs out so I wouldn't have missed (僕は逃さないよう精一杯走った)
But I missed, I missed, I missed (でも僕は逃した、逃した、逃してしまった)
And I kept on repeating this (それから僕は後悔してばかりだ)
I wanted to say you were wrong (ただ君に”間違っている”と言いたかった)
But it was your choice (伝えたって仕方ないのにね)
Goodbyes are all but lies (”グッドバイ”なんて全部嘘だ)
But there's no where to hide when you (だって君が死んでしまったら)
See your own mistake (もう逃げ込む場所すらないんだから)
You can't take them back (命は決して戻らないよ)
So you pray and pray (だから苦しいときは祈って)
But just please be careful with your mind (悪魔の囁きになんて耳を貸さないで)
[Chorus 2]
To live in these little cells (未だ小部屋の中で生きていて)
Trapped in these broken shells (出来損ないの殻に閉じこもっているけど)
The world that has taken sunlight (希望の光を浴びた世界では)
And stolen the fight from my fist held tight (もはや争う必要すらなくなるから)
I'll sing through the night (僕は夜通し歌えばいいのさ)
I will Keep In Mind (心に留めておくよ)
To be brave so that I can find (全ての痛みを乗り越えたんだから)
The path where I took all the pain (またその勇気を見つけられるってことを)
But still walked away with a true heart (それが本心だから、この死の淵から去るよ)
I've known it all (これまでだって全部知ってた)
All the way (ずっと知ってたんだ!)
[Instrumental Break]
[Chorus 3]
See the world for yourself (自分の目で世界を見よう)
Trapped in these broken shells (この殻に閉じ込められながらも)
The world that has taken sunlight (希望の光を浴びた世界では)
And stolen the fight from my fist held tight (もはや争う必要すらなくなるから)
I'll sing through the night (僕は夜通し歌えばいいのさ)
I will Keep In Mind (きっと心に留めておくよ)
To live so that I can find (たくさんの痛みを乗り越えたんだから)
The path where I took all the pain (またその方法を見つけられるってことを)
But still walked away with a true heart (それが本心だから、この死の淵から去るよ)
I've known it all the way (これまでだってそれを、ずっと知っていたんだ……)
「白鲨JAWS」というバンドについて
この楽曲を作成した「白鲨JAWS」について解説する。白鲨JAWSは2019年に中国・北京市で結成された、ポップロックの3ピースバンドだ。作詞を務めるヴォーカルの「魚麦扣(マイケル・ユー)」とギターの「嘉林(ジア・リン)」は、ともにアメリカのバークリー音楽大学を卒業しており、英語が流暢である。そのため本バンドの楽曲はネイティブな英語で書かれている。
2021年に配信されたアニメ「時光代理人 -LINK CLICK-」のOPテーマ「Dive Back In Time」を制作し、注目を集める(日本語版OPでは同曲の「bicaso feat.Gen Kakon」によるカヴァーが使用された)。2023年には同アニメの第二期が配信され、そのOPテーマ「VORTEX」も制作した(こちらは日本語版でも原曲のまま使用された)。
バンド名をそのまま読むと「バイシャ・ジョーズ(=ホホジロザメの顎)」となるが、マイケルいわく、バンド名としての本来の読みはただの「ジョーズ」で、これはサメのホラー映画の「ジョーズ」に由来しているようだ。
- ヴォーカル:魚麥扣(もしくは魚麦扣)(Michael Yu)(読みが「ユー・マイ・コー」なので転じてマイケル・ユーと呼ばれる。意味は魚・麦・ボタン)
- ギター(脱退):Bangbang
- ギター(新加入):呉嘉林(Wu Jia Lin)(読みは「ウー・ジア・リン」もしくは「ウォゥー・ジャーリン」)
- ベース&サウンドエンジニア:老妹兒(もしくは老妹儿)(Lao Meier)(読みは「ラオ・メイア―」、意味は「お姉さん」もしくは「おばあちゃん」)
お終いに – 俺なりの解釈の説明
俺の意訳は気に入っていただけただろうか? あの英語詩は人称や時制が複雑なので、かなり読解しにくいのだが、俺が思うに「Keep In Mind」という曲は、友達の自殺を止めることができなかった主人公の憤りと、心の葛藤を詠っているのだと思う。今、主人公は友達と同じ苦しみを抱き、奈落へと落ちていきそうになるが、何とか本来の自分の強さを思い出して、また明日を生きてみようと決意する物語なのではないだろうか?
よって一回目の”A world that has taken sunlight”は、”has taken”を「奪われた」と解釈し、この世がディストピアに思えてしまう心情を表現したが、二回目の”The world that has taken sunlight”は同じ”has taken”を「(光や水などを)浴びた」と解釈し、主人公の世界への見方が変わりつつあることを表現した。英語文法的に、全く素っ頓狂なことを言っていたらすまない。
ともかくとして、今回の記事を通して「Keep In Mind」という楽曲の良さや、リンククリックというアニメの魅力が、誰かの心に伝わってくれたら嬉しい。リンククリックは本当にハートフルな作品で、また他にも優れた楽曲が多数登場するので、気になった人はぜひ観てみてね(俺も第三期が待ち遠しい!)。それでは”グッド”バイが嘘にならぬよう、これを機に当ブログのこと知ってくれた人はぜひKeep in mind(心に留めておいて)ねっ☆
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