初めに – 情報は力なり
先日こちらの記事にて「ニュースと株価の関係性」について論じた。これは別に株券だけの話ではなく、およそ市場で取引される金融資産のほとんどが、そのときの投資家心理で買われたり売られたりしていると言っていい。彼らの心理に影響を与える情報こそ「ニュース」であるからして、より迅速で正確な情報を得られることは、投資家に一定のアドバンテージを生み出すわけだ。
ここでは投資家としての目線を重視したうえで、いったいどのメディア・ツールが最良の情報源なのかを模索したいと思う。この記事が、あなたを情弱ならぬ「情強」にする助けになれば本望だ。
主要な「情報メディア」一覧
①速報性重視のニュースメディア
まずは「何があったのか」を一早く知る必要がある。そのためには速報性の高いメディアを利用するべきだ。いくつか紹介しよう。
- Bloomberg(ブルームバーグ)
アメリカの通信社。経済・金融情報の最速クラス。企業・市場・為替・政策まで幅広い。アプリ版は日本語対応していないのでWebページとして利用する。ただアプリ版にサインインすると、登録したメールアドレス宛に平日の朝「1日を始める前に読んでおきたいニュース5本」という題名の日本語のメールが届く。これがなかなか便利。 - 日本経済新聞(日経電子版)
日本の経済ニュースの最前線。Web版、アプリ版ともに使い勝手良好。速報も強いが、有料記事が多め。日本の個別株でデイトレードするなら、こちらの有料会員になるのも選択肢の一つ。 - ロイター(Reuters Japan)
ロイターはイギリス発の通信社で、現在はカナダの「トムソン・ロイター(Thomson Reuters)」の一部。グローバル経済の動向に強い。要点を短くまとめた速報が便利。アプリ版は日本語非対応。 - NHKニュース
信頼性が高く、日本国内の政治・経済ニュースに強い。ただしニュースのジャンルが幅広いので、経済の動きを一早く察知するには不向き。一方で、地域的な天気や災害情報を知るにはベストな選択。アプリ版あり。 - X(旧Twitter)
速報性No.1。経済アナリストやジャーナリストの投稿をフォローすると、重要ニュースをリアルタイムで知れる。例:@nikkeionline(日本経済新聞)、@ReutersJapan(ロイター)、@BloombergJapan(ブルームバーグ)など。
一方でフェイクニュースの温床になりがちであったり、他の不必要な情報も膨大に目に入ることがデメリット。必要な情報を的確に仕入れるためには、相当の集中力と情報リテラシーが求められる。 - Yahoo!ニュース(速報)
「ヤフー株式会社」が運営するニュースサイト。比較的速報性に優れるが、経済的に重要なニュースを見つけるのが難しい。基本的には同社が運営するポータルサイト「Yahoo! JAPAN」と同じで、各ニュースの「コメント欄」にて読者の生の声が閲覧できるのが利点だが、不適切なコメントにより炎上しがち。アプリ版あり。 - msnニュース
マイクロソフトが運営するポータルサイト「msn」のニュースページ。全体として他のポータルサイトと近いが、一部、記事の質にやや難があり、ときには全く核心に触れていないタイトル詐欺の記事も見受けられる。ヤフーニュース同様にコメントが読めるが、幸か不幸か、過疎ぎみなので炎上は見られない。 - Googleニュース
Googleが運営するニュースサイト。オリジナルの記事はなく、全て別のニュースサイトの記事へのリンクとなっている。その分無駄な記事が少なく、各ジャンルごとに的確な情報を得られる。ページのレイアウトが優れている点や、デフォルトでダークモードに対応している点で使い勝手がいい。アプリ版あり。
②市場リアルタイム性重視のメディア
その速報に対して市場がどのように反応しているのかを知るには、各市場のリアルタイム情報を提供してくれるメディアがうってつけだ。
- Yahoo!ファイナンス
株価・為替の変動をリアルタイムで確認可能。SBI証券と連携でき、自身の保有資産とニュースを関連付けやすい。ニュースの題材や質もよく、経済動向をキャッチするのに適している。各銘柄における「掲示板」では投資家目線のリアルな声が閲覧できる。ただし投資判断とするには信憑性に欠けるので注意する。アプリ版あり。 - TradingView
アメリカの「TradingView Inc.」が運営するメディア。世界中の株価・為替・仮想通貨のリアルタイムチャートを提供する。外国株や国債、リート、通貨、仮想通貨などに投資している人には便利で、投資信託などのページでは見られないチャートの細部まで見られる。日本語にも問題なく対応で、アプリ版もある。
ちょっとしたコミュニティにもなっており、会員が自由なトピックで投稿できるようになっている。各銘柄のチャート分析に関する個々人の見解が多いが、参考に読んでみても面白い。提供される機能やサービスが大幅に強化される有料プランもあるので、プロトレーダーや億トレーダーなどのガチ勢なら課金するのもあり。 - QUICK(クイック)
「日本経済新聞社」の子会社「株式会社QUICK」が運営する証券市場の専門メディア。株式市場や金利の動向を迅速に配信。市場動向に即したニュースも取り扱っており、その一部が有料会員限定の記事である点も含めて、使い心地としては「Yahoo!ファイナンス」に近い。アプリ版なし。 - 5ちゃんねる(市況板)
日本最大級の匿名掲示板サイト。かつての「2ちゃんねる(2ch)」であり、現在は「Loki Technology Inc.」というフィリピン所在の海外法人により運営されている。経済系の板では市場の動向や、個別銘柄の急騰・急落情報がリアルタイムで議論される。それぞれの板にアクセスするには、掲示板ページ内で「市況」などと検索するか、左のカテゴリーから「政治経済」→「市況1」などと辿っていく。
「市況1」は国内株式中心の板で、日経平均、個別株、デイトレード、材料株などにまつわるスレッドが立っている。「市況2」は先物・為替・海外市場などの板で、日経225先物、ドル円、NY市場、仮想通貨などのスレッドが立っている。
X同様リアルタイムで生の意見が見られる一方、注意すべきなのは、短期トレード向けの情報が多く長期投資には向かないことと、匿名ゆえにデマ・煽りなどの不要な情報も多いことだ。 - StockTwits(ストック・トゥウィッツ)
海外版Twitterのような投資家向けSNS。即時性に優れ、情報の質も高い。もし英語ができるなら力強い味方になってくれるだろう。 - TDnet(適時開示情報閲覧サービス)
”適時開示情報 ”とは、上場企業が投資家に対して重要な情報を速やかに公開する仕組みのことで、証券取引所のルールに基づき、企業は株価に影響を与える重要な情報を、できるだけ早く公平に開示する義務がある。
TDnet(適時開示情報閲覧サービス)は「日本取引所グループ(JPX)」が運営する無料サービスで、全上場企業の適時開示情報をリアルタイムで確認できる。適時開示情報は他のニュースサイトでも「IR情報」として取り上げられるが、TDnetは網羅していることとその速さにおいて大いに役立つ。
③ニュース分析・深堀に適したメディア
ニュースの内容や背景を理解し、経済の次の動きを読むには、専門家による解説が参考になる。ここではそういった側面が強いニュースメディアを取り上げる。
- 東洋経済オンライン
マクロ経済や企業戦略の分析が豊富なウェブサイト。経済とは直結せずとも、重要な社会問題を多く取り扱っており、数年前の記事でも読む価値がある。アプリ版がないのが悔やまれるほど記事の質が高い。どの記事もページ分けされているが、それほどの煩わしさは感じない。 - ダイヤモンド・オンライン
金融市場の分析や投資に役立つ情報が多い。「東洋経済オンライン」同様の使い勝手。記事本文の読みやすさはピカイチ。本文幅が長く、また改行頻度や改行後のインデントなど、基本的な作文作法がなっており、好感が持てる。ただし有料記事が多く、またトップページから無料記事を探しにくいのが玉に瑕。 - NewsPicks(ニューズピックス)
専門家・経営者のコメント付きで、ニュースの背景を深掘り。上記二つと似てはいるが、やや記事が間延びして感じられる。その理由は二つあり、一つ目は記事本文の横幅が狭いこと。そして二つ目は画像が多いことである。記事に画像が多いことは素晴らしいが、一つ目の理由によりデメリットと化している。
狭い空間に画像が多く敷き詰められ、本文を圧迫する結果、読了までに必要なスクロール操作の回数が尋常ではなくなっている。左から「INDEX(もくじ)」、「本文」と2カラムでしか分けられていないにもかかわらず、本文幅をあれだけ狭くしている理由は不明。右のコメントカラムを表示すると左のINDEXカラムが非表示になる仕様から察するに、デザイナーはコンテンツ間隔が広い方がスマートな印象を与えると考えているのだろう。 - Youtubeの経済情報チャンネル
証券会社や投資家などが運営するYouTubeチャンネルは、どれも若干のエンタメ要素こそあるが、経済の基本やニュースを分かりやすく解説していて参考になる場合も多い。文字を読むのが苦手な人におすすめ。
用途別おすすめの情報源
①日本系投資家の場合
日本経済新聞(日経電子版)の有料会員になって速報を掴み、Yahoo!ファイナンス、QUICKの内のどちらかを使って市場の反応を見る。場合によっては後者二つのどちらかでも有料会員になってもいいかもしれない。そして勉強のために東洋経済オンライン、ダイヤモンド・オンラインどちらかの有料会員になるのも手。
②世界系投資家の場合
速報にはブルームバーグかロイターのウェブサイトを活用し、市場の動きはTradingViewでうかがい知る。勉強や今後の予想にもブルームバーグかロイターを使えば充分だ。それら三つのメディアで気に入ったものの有料会員になればいいだろう。
③超短期トレーダーの場合
日本個別株やFX、仮想通貨などのスキャルピングやデイトレードをする人なら、それらのサービスを提供する証券会社やネットバンキングのウェブサイトや専用ツールが一番の情報源だろう。チャートのテクニカル分析や板情報は何よりも早い情報だからである。
そこにプラスして併用できるのは、適時開示情報(株式の場合)やX(旧Twitter)、TradingView、5ちゃんねる、StockTwitsなどくらいだ。そういう”投機的”な取引では単なる”速報”以上の即時性が求められるので、他のニュースサイトに頼っていたのでは遅いと思われる。
そういった”イナゴ投機家”は常日頃から、専用ツールの「ランキング」機能を使い、出来高急増・価格急騰の銘柄に「とりあえずエントリー」したり、急騰銘柄をSNS、掲示板、スクリーニングで探したり、適時開示情報を見て材料がないかを探しているのだ。
彼らは原則として「早く乗って、早く降りる」を徹底するため、短時間で利確 or 損切りを行うことになる。この戦略は一見安全に思えるが、情報の信憑性などを吟味しないままに材料に飛びつくことにもなるので、フェイクニュースやデマ、煽りのような誤情報に騙され高値掴みし、結果として大口投資家(機関投資家)に狩られるリスクも高いので注意する。
まとめ
”情報は力”ではあるが、どの情報がどれほどの”パワー”を持っているかは、あとになってみないと分からないというのが常だ。そういう意味では「今ある優位性に乗る」という超短期的なトレードは理にかなっているように思える。結局「何が最速? 正確? そして何が一番トレードに役立つ?」という疑問やニーズを突き詰めていけば、最終的にイナゴ投機家みたいな動きになってしまうのは仕方ないことに思える。
ただ偽情報に飛びつくのが最悪のパターンなので、少なくとも”ちゃんとした材料”のもと投資判断を下すべきである。そのためここで最も有効な情報源としては、「TDnet(適時開示情報閲覧サービス)」であると結論付けさせていただこう。なぜなら適時開示情報は投資家にとって最速・最重要な情報であるからして、当然株価に大きな影響を与えうるわけで、売買判断に直結し、かつ公式の情報として信頼性が高いからである。
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