
第五十五章 – 青春時代② 高校生活 Ep.42:四六時中、魂はずっLOVE Be with you エターナル・ツイン・フレイムズ!!
エリスの高校生活㉟ 生還の果てに
「ハァ、ハァ、ハァ……」
絶体絶命の危機を免れた少年少女と、その二人を窮地から救い出した少年、計三人の困憊した息遣いが、モーザー学校の屋上で繰り返されている。上空では今だカラスの群れが、翼をはためかせては旋回し、地上にいる少女へと鋭い眼光をくれている。だがカラスたちも少しやりすぎたと思ったのだろう――先までの敵意に満ちた鳴き声は、今では鳴りを潜めている。
死の恐怖と身体の疲労が徐々に収まってきたところで、救出された少年――すなわちエリスが、『ヒーロー』に対し最大限のお礼の言葉を囁く。「だ、ダニエル――ハァ、ハァ――、本当に――ハァ――ありがとう――ハァ――ありがとう……」なぜ彼がここにいるのか、どうやって自分たちのピンチを知って、駆けつけてきてくれたのか……そんな些細なことはもはや、どうでもよかった……今はただ、ソフィーも自分も助かった……それだけで――。
自慢の筋肉を使って、二人の尊い命を奈落から助け出し、同時に己の贖罪をも果たすこともできたヒーローが応える。「良かった、間に合って……本当にっ――」彼がエリスを抱きしめる。「よく、僕が来るまで耐えてくれたね……君のことを誇りに思うよ、エリス……」言いながら、恋人の後ろ襟にあるクリップ式の盗聴器を握り締める彼……それは紛れもなく彼の罪に他ならなかったが、それがなければここに来られなかったことも、また事実だった……彼は悔恨と感謝、二つの相反する感情を噛みしめながら、そのクリップを襟から外し取った――。
「生きててくれて、ありがとう……エリス!」恋人を目の前で抱き留めたダニエルが、そう感謝の気持ちをお返しすると、恋人は疲弊しきった顔を小さく綻ばせて、「うん……」と応えてくれる。それからダニエルは、そんな恋人に「ちょっとこれ、持ってて」と”クリップ”を手渡してから、満を持して隣の少女へと両腕を振り上げるのだった――。
バサッ――。聞こえてきたのは、拍子抜けするほどあっさりした衣擦れの音。ダニエルは今回の騒動の原因にして、ある意味では最大の被害者である少女――つまりはソフィーを、殴るではなく抱きしめることに決めたようだ。たとえ彼女が自分を嫌っていようと、失意のなか失われていい命など、ありはしないのだから――。「それに君もだ、ソフィー……よく踏ん張った……生きることを選んでくれて、ありがとう……」彼がそう告げると、凍り付いた彼女の両目から、清らかな涙が零れ落ちた。
「どうして僕がここにいるのかとか、そのうえどうして君たちの事情に精通しているのかとか、疑問に思うことは多々あると思うけど、安心して――これからその訳を話すから」そう言うとダニエルは、へたり込む二人の前で跪いたまま、エリスから返してもらった――と言うか奪い取った――クリップを床に置いてから、深い反省の気持ちを込めて頭を垂れるのだ。「今日はごめん! 君たちの関係を掻き回してしまって! それともう一つごめんっ!! 実は今日ずっと、エリスの後ろ襟に着けた”この盗聴器”を使って、君たちの様子を盗み聞きしてたんだ! このまま彼を残して学校を去っても、大丈夫か確認したくて……僕は酷い彼氏だ……酷い恋敵だ……謝っても謝り切れないけど、とにかくごめんっ!!」
彼の心からの謝罪とは裏腹に、エリスもソフィーもほとんど内容を飲み込めていなかった。まだ死線を潜り抜けた衝撃で放心状態だったのだ。だが『目の前に置かれた謎の物体が”盗聴器”である』と言うこと、『それが一日エリスの衣服に付着していた』と言うこと、『その音声をダニエルが聞いていた』と言うことの三つを理解したところで、少なくとも彼が『ここにいる』ことへの不思議は消えていた。
それと同時に、ソフィーは驚き、また感心してもいた――あんな小さい装置にもかかわらず、こんな鉄筋コンクリートの建物の屋上でも拾えるほどの電波を送信でき、かつ視聴に耐えうるほどの音質を保っていることにっ!(気になるとこ、そこ……?) そんな物が日がな一日身体に付着していたなんて、エリスは大丈夫なのか!? もしやたくさん”被ばく”したせいで、明日ポックリ逝ってしまうのではないかっ!?
※電磁波のうち『被曝』の懸念があるのは、電離作用によりDNAを破壊することができる『電離放射線』だけ(分類されるのはガンマ線とX線)なので、Wi-Fiや電子レンジの『マイクロ波』や、テレビ・ラジオ・携帯回線・トランシーバー(アマチュア無線)などの『ラジオ波』では、高出力の『熱作用』による火傷懸念こそあれど、DNA切断による癌原因にはなりえない。一般人が日常の被曝で警戒すべきなのは、放射性物質に汚染された土壌から獲れた(採れた)食品の摂取や、病院でのレントゲンおよびCT撮影、原子力発電所の近隣住民くらいである。
一瞬、そんな不安が頭を過ったソフィーだったが、実際問題、我々は常に電波を出しているスマホを持ち歩いているわけなので、それで重大な健康被害が出るかと問われれば、そうでないことは明白だった。そんなことよりも、15mの高さから落下する方がよほど致命的である。自分たちはそれほどの危機から救われたのである。この”クリップ”と、持ち主の”スパイ・ナード”によって――。
「あ……ありがとう、ですわ……」やっとソフィーの口から出てきたのは、そんな犯罪行為への非難の言葉でも、恋敵への当てつけでもなく、混じりっけなしの感謝の言葉だった。これまでこの女王様から、そんな”お優しいお言葉”をかけてもらえた試しのないダニエルは、どこか”くすぐったく”も温かい気持ちになって、つい照れ隠しで「どういたしまして!」なんて言っては、床の盗聴器を遠く彼方へと投げ捨てるのだった。
ほらっ、飛んでけっ――ピュンッ! 遠くの茂みのなかに消えていく盗聴器……ダニエルが心のなかで叫ぶ。『もう二度と戻ってくるんじゃないぞー!!』それはまるで、人間に襲われ怪我をした野生動物を見つけた旅人が、その動物を介抱したあげく森とか海に放してやるような、そんな感動的なシーンだった……(どこがやねん……)。
”介抱者ダニエル”が清々しそうに続ける。「それで、いろいろ考えたんだけどさ……ソフィー、君お昼休みのとき言ってたよね? 『エリスが誰か一人のものになるのは不健全だ』って……僕もそれは正しいと思う……だからさ、もし君たちさえよければ、『ポリアモリー』……挑戦してみるのも悪くないかなって……僕はそう思うんだけど……どうかな?」
この意外な提案に対し、ソフィーはまだ呆然としながらも、こう返事する。「え、えぇ……悪くないですわね……けど、ワタクシはちょっと……今はまだ、気持ちの整理がついてないので……何とも言えませんわ……」
これを受け、ダニエルが言う。「うん、それでいいよ。簡単な決断じゃないと思うし、簡単な道でもないと思うから……それで、エリスはどう?」彼が質問相手をシフトすると、相手の男の娘は薄らぼんやりとした表情で「ぼ、僕は……」と呟いて黙りこくってしまう。ダニエルが「ゆっくりでいいよ。誰にも遠慮せず、君が一番幸せだと思う選択をして」と言うも、相手は「僕は……」と”うわ言”のように繰り返すだけだ……。
そして次の瞬間! フラッ――。エリスが身体が大きく揺らいで、なす術なく床に倒れかける――が、間一髪それを受け止めるダニエル。すぐさま彼が、「だ、大丈夫エリスッ!?」と恋人の容態を確認すると、そこには朦朧とした意識のなか、苦しそうに喘ぎ続ける恋人の姿があった。「エリスッ! エリスッ!!」どんなに呼びかけても返事がない。腕のなかにいる恋人は妙な熱を帯びている。それらの症状を鑑みるに、恐らく彼は『重篤な風邪』を患っているようだ。
そう……ここに来て彼(エリス)の身体は、連日の過労とストレスにより、ついに限界を迎えてしまったのである。
「エリスゥゥゥァァァ!!!」
一難去ってまた一難! ダニエルの叫びに呼応するかのように、また別の叫び声が聞こえてくる。
「こらぁっ! 君たちぃぃっ!! いったいそこで、何をしているぅぅぁぁっ!!!」
どうやら、とうとう学校の施設管理人(さっきソフィーが出し抜いた中年の男性)が、『施設の物理鍵を束ねたキーリングが紛失している』ことに気づいて、屋上まで上がってきたようだ。これはダニエルたち三人にとって非常にマズイ状況だ。とりわけ、事の”実行犯”であるソフィーにとっては……。
「いいかい!! そこを一歩も動くんじゃないぞ!! これからたっぷり事情を聞かせてもらうからっ、お前たち覚悟しておけよぉぉぉぉ!!!」
恐怖に慄くダニエルとソフィーは、これから訪れる悪夢を前に、己の行いをコッテリ余すことなく反省し、やがて下るであろう社会的な罰を、甘んじて受け入れる覚悟を決めるのだった。
*
その日の19時15分。予想通り、残っていた学校の職員たちに長時間コッテリ絞られ、そのうえ”腐った骨の髄”まで綺麗にしゃぶり尽くされたソフィーは(誤用も甚だしい表現。それに実際は、自殺未遂に至った生徒にそこまで厳しく当たることはなく、学校側としては何よりも生徒の心のケアが最優先)、父親に連れられてトボトボと学校を後にしていた。当のエリスとダニエルは、ひと足先に帰されており、時に父親に庇われ、また叱られながらもソフィーは、実に2時間半にも及ぶ孤独な戦いを耐え抜いたのだ。
結果として、彼女は1ヵ月の休学処置を受けることとなり(処分や処罰ではない)、またその間『メンタルヘルス・プログラム』への参加を義務付けられることになった。これにより彼女は、事実上、今年度の『州立スイス・マチュリテ』および『国際バカロレア』取得はほぼ絶望的となった(どちらも、ただ試験に受かれば取得できると言うわけではなく、学校での内部評価や単位も重要になるので)。
ところで、先に解放された二人であるが、エリスの方は体調不良かつ全く非がない立場なので当然であるが、なぜダニエルまで解放されたのかと不思議に思うかもしれない。その訳は単純で、ひとえに『彼の盗聴がバレなかった』からである。と言うのも、施設管理人さんが駆け寄ってくる刹那、ソフィーはダニエルにこう呟いたのである。
「いいこと、ダニエル・シャステル……『さっき飛んでいった小鳥さん』のことは、秘密にしておきなさいな……ワタクシも告げ口するつもりはなくってよ……だから『あなたはただ、ワタクシの声に気づいて屋上まで来た』……そういうことにしておきましょう……いいですわね――」そして彼女は、管理人さんに捕まった。
彼女のこの計らいにより、ダニエルは少年院行きを免れ(これも大袈裟か。仮に学校側が知ったとて、生徒でもない未成年の軽微な非行ごときで、そこまで事を荒げることはないだろう)、同じく今年度の大学入学資格取得の権利を剥奪される事態は避けられた。そのことを重々理解していたからこそ、帰り道、独り自転車を漕ぐダニエルの心は、エリスへの心配とソフィーへの感謝で満たされていた。
こうして終わろうとしている、長い長い2042年4月17日、木曜日の物語……。夕暮れの帰り際、ふと後ろを振り向いて、寂しげな目で北の空と林を見つめたソフィーは、父親に「ほら行くよ、”ソフィー”」と呼び掛けられるまでの数十秒間、『もしも自分があのまま落ちて、死んでしまっていたなら……』と、あり得たかもしれない世界線に思いを馳せていた。
しかし自分は生きている……今この瞬間、確かに生きて何かを感じている……それは少なくとも、『自分が死んだら嫌だと思ってくれた人が、二人もいた』からこそ起きた奇跡だった……家族の他に、二人も……自分は愛されてると思っていいのだろうか? これから人を愛していけると思っていいのだろうか? 変われると信じて、醜く生き恥を晒し続けても、いいのだろうか……?
背後から父親に呼ばれた彼女は、無言で前を向き直しては、静かに校舎に別れを告げるのだった。後から知った話だが、この時期カラスたちは繁殖期を迎えており、あの林にはたくさんの巣が作られていたそうな。よってカラスたちは、何も彼女を地獄へ突き落そうとして”あんな行動”を執ったわけではなく、あれは極めて稀なモビング(集団威嚇)の一種だったようである。
そう、生物は……根源的に善でもなければ、悪でもまたないのである……。
高校卒業編 前半部 完
エリスの高校休日㉝ 阿鼻叫喚!? 我らに『E』が舞い降りた!
結局エリスは、あれから二日寝込むこととなり(学校からの帰りは祖父に送ってもらった)、現在は大分体調も回復してきた2042年4月20日(日)の、15時49分である(※ちなみに前日の土曜日は今年度の『春祭り』だった)。その日エリスは、代わるがわる来るお見舞い客への対応で、大忙しだった(なぜみんな代わるがわる来る!)。と言うのも、前日の夜に『体調良くなってきたよ。月曜日からは学校に復帰できそうだよ』という趣旨のメッセージを友達に送ったせいで、誰も彼もが『じゃあ明日お見舞いに行くー!!』と言い出してしまったのだ(だからなぜ代わるがわ――)。
これまでの訪問客との対話で、少なくとも『木曜日の件』は生徒の間では広まっておらず、学校側が内々に処理したことがうかがえた。それでも突然のソフィーの休学と、エリスの体調不良、そして前日の二人の様子を目撃した少数の証人の存在も相まって、いろいろと変な噂は立っているようである……。
(※彼らの学校は、水曜以外の平日は学期前登録者のみ16時~17時15分まで『指導付き研究』という追加学習があるので、あの日もある程度の生徒および教師たちが学校に残っていたが、幸いソフィーが宙ぶらりんになった北側の四階教室は使われていなかったので、決定的な目撃者はゼロで済んだ。やはり公共の場での自殺沙汰は、多くの人にとってトラウマになる危険を孕んでいると言える)
特に見舞客の一人(普段エリスとよく話す同学年の女の子)が見せてくれてた、『E・ラヴァーズ』なるファン・クラブのチャット画面は、まさに阿鼻叫喚の嵐と化していた。みんな口々に『エリス様がいない学校生活なんか地獄だぁー!!』とか、『きっと”あの魔女”のせいだ! あの魔女が悪い魔法を使って、エリスたんのハートを傷つけたんだ!!』とか、『クッソー魔女め~!! エリスちんの”エリスちん”は、みんなのものなんだからなぁ~!!』とか、わけの分からないことを呟いていた(何や”エリスちん”って……エラスチンの親戚か?)。
当のエリスは、そんなファン・クラブの存在など露ほども知らなかったので、画面を見せられるや否や、激しく咳き込んでは、「ぼ、僕のファン・クラブなんてあるのっ!!?」と仰天せざるを得なかった。それからは画面を軽く流し見しながら、「は、恥ずかしいよ僕、こんな……それにみんなして、ソフィーとかダニエルの悪口言ってるし……やめてほしいな、こういうの」と、せめてもの要望を吐露するも、相手の女の子は「ダイジョブダイジョブ~! みんな軽いノリで楽しく駄弁ったりしてるだけ”みたい”だからさ~! やらせてあげてぇ~!」と、己の関与を否定した。
終いにはエリスが、「で、でもこれだけは言わせてもらうねっ――」と、その子のスマホを使ってチャット画面に新しいメッセージを送ってしまい、その子がすぐに「うわっちょっ! エリスやめてぇ~!」とメッセを削除したことから、その子が『会員番号32』のE・ラヴァーズ構成員であることが発覚し(もっとも、エリスはそういう事情には気付かなかった)、またチャット内でも、32番の突然の奇行の意味を察したメンバーたちが騒ぎ始め、プチ・フィーバー状態に突入することとなる。
エリスが送ったメッセージ『ソフィーは魔女なんかじゃないよ! ホントはすごく良い子だみょん!』
→18秒後削除される(エリスはメッセージ入力時間も含めて、40秒程度その子から逃げ切った。でも最後ちょっと打ち間違えた)。
この奇妙な投稿に対し、32番が乱心したなどと思う輩はいまい――皆スマホの通知画面で原文を読んで、即アプリを開いてその投稿が削除されているのを確認したところで、『今のはもしや、”ELLIS”本人からのお告げでは?』と疑うくらいには、察しのいい連中である。そして最速でその結論に到達したメンバーの一人から、このような暗号が届けられる。
『32番よ……。もしや今のは、<コード:S1773>なのか……? もしそうなら、”愛言葉”を返しておくれ……』
どうしてそうなったのかは不明だが、その暗号が意味することだけは、何となく分かる他の新人構成員たち……そして32番の少女は、隣で「あーん! 消さないでよ僕のメッセージ~!」と喚いている”本丸”を押さえ込んでは、入会時に部長(会員番号001)から教えられた合言葉の一つを、タイプしていくのだった――。
『エリスなければ、我らもなし(No ELLIS, no Lovers.)』
その仰々しいスローガンみたいなテキストが放たれた瞬間、ルーム内は歓喜に湧くこととなる。ワァァァァァァ!!! みんな口々に――と言うか、『文字文字に』? 謎の『祝福の言葉』を交わし始める。
『エリスとともにあらんことをっ!!(May Ellis be with us!!)』
『我らはあなたの恋人なり!!(We’re your lovers!!)』
こ、こいつら……スター・ウォーズに毒されすぎてる……とは言え、大方リーダーの趣味なのだろう……(たとえそれがどんなものであれ、ファンダムとは恐ろしいものだな……)。その様子を見た『32番ちゃん』は、『こりゃ引っ込み付かなくなったな……』と思いながら、観念してスマホを本丸に差し出すのだった。「ちょっと、ラヴァーズたちが君と話したいって……二、三言でいいから、何か言ってあげて」
頼まれたエリスは、「えっ? う、うん……」とスマホを手に取り、そこに溢れている『熱烈な愛言葉』たちに目を通しては、少し困ったように苦笑して、やがて伝えるべき言葉を探り当てては、右手の人差し指を慣れたようにフリックさせていくのだった……そして――。
第一の神託『あの、こんにちは。僕、今○○(32番ちゃんの名前)のスマホを借りてここにいます。モーザー学校の13年生、エリス・シンクレアです。今日○○から教えてもらって、初めて”こういうクラブ”があるってことを知りました。正直戸惑っていますが、嬉しいって気持ちもちょっぴりあります。それで……みんなは、ニヨン・モーザー学校の生徒なの?』
ラヴァーズの反応。
『もちろんです!! あなたがいるからモーザーに来ました!! 不登校にならずに済みました!!』
『大好きです!! いつも遠くから見てます!! ずっと私たちの傍にいてください!!』
『はい!! 俺たちスクール・メイトです!! だから昨日の『春祭り』はつまらなかったです(寂し泣きの絵文字) また去年みたいに、あなたの歌声が聴きたかった(号泣の絵文字)』
『僕はジュネーヴのモーザー学校生です!! つい先日このクラブを知って加入しました!! できればそっちに行きたいです!!』
エリスの心の反応『うわぁ、みんなすごいなぁ……どうして僕のこと、そんなに慕ってくれてるんだろぅ?』それから――。
第二の託宣『みんなの気持ち、すごく嬉しいよ。一人ひとり誰かは分からないけど、同じ学校にいるってことは、きっと何度かお話したこともあるんだろうね?(あっ、でもジュネーヴの子とは会ったことないのかな?) ぜひ、これからも仲良くしてね(歓迎する絵文字)』
ラヴァーズの二次反応。
『こちらこそ! 仲良くしてください!!(キャピキャピな絵文字)』
『明日会えるのを楽しみにしてます!!』
『もちです!!(サムズアップの絵文字) ずっと応援してます!!』
『実は以前(11年生のとき)に、スキー・キャンプでお会いしたことがあります!! あと去年の春祭りにもお邪魔してました(メロイック・サインの絵文字) またお会いしたいです(照れ笑いの絵文字)』←話を聞く限りエリスの同級生っぽい
エリスの心の二次反応『フフッ……何だか一遍に友達が増えたみたいで、嬉しいな……僕も早く元気になって、学校のみんなに会いたいな……』
ラヴァーズの二相性反応。
『それで、エリスさん。お身体の方はもう良くなりましたか? 我々ラヴァーズ一同、あなた様の身を案じております。つかぬことをお伺いしますが、その体調不良の原因は、木曜にあった”何らかの事件”なのではありませんか? まさかとは思いますが、あの魔女――ソフィー・アナエル・グラシエ(Sophie Anaëlle Glacier)に何かされたとか?』
その差出人は『部長』その人だった。これに触発された他の者たちも続く。
『そうです教えてください! あの日何があったんですか!? 魔女はなぜ休学に!?』
『僕も知りたいです』→『私も』→『俺も』
エリスの心の二相性反応『えっ……やっぱりソフィーって、この人たちから”そんなふうに”思われてるんだ……ならちゃんと誤解を解かなくっちゃ! だって、あの日一番辛い思いをしたのは、ソフィーの方だから――』
第三の神告『みんな、誤解しているようだからハッキリ言っておくね? あの日僕は、ソフィーから何もされてないよ(※ある意味では大嘘)。僕のこれは『ただの風邪』。だからもう、彼女のことを悪く言ったりするのはやめてね? 彼女、時に冷たい態度をとることもあるから、そういう思い違いをされやすいんだろうけど、根はすごく優しくて素直な子なんだ。だから、お願い。ソフィーのこと(あと、もちろんダニエルのことも)、先入観だけで酷く言うのはやめて。じゃないと僕は、すごく悲しい……』
幾ばくかの沈黙の後、ラヴァーズの三次反応が始まる。
『分かりました! もうしません! あなたを悲しませるようなことは、決して!』
『同じくです!(敬礼の絵文字) 俺らの気持ちはあなたとともにあります!』
『そうですよね……自分たちの浅薄さを痛感しました。でも信じてください! 私たち別に、本気で彼女を嫌ってたわけではないんです! どちらかと言えば彼女は、ラヴァーズの団結力向上のための、負の燃料だったんです……浅はかでした。もうしません(ウルウルな目の絵文字)』
そして『部長』からのメッセが届く。
『あなたがそうおっしゃるのでしたら、その御心を誠心誠意、尊重いたします。もし、これまでの私どもの『軽薄なやり取り』を見て、お目汚ししてしまったなら申し訳ありません。並びに、あなたに断りもなく、このような非公式な場を設けてしまったこと、心よりお詫びいたします。もし寛恕いただけるのであれば、このままクラブを存続させていきたく思うのですが、いかがでしょうか? もちろん金輪際、誰かを扱き下ろす投稿は禁止させます(祈りの手の絵文字)』
エリスの心の三次反応『やった! やっぱりみんな良い人たちだ! って当たり前だよね? みんな同じ学校の仲間なんだからっ! 話せばきっと分かってもらえるって、信じてた!(それにしても部長さん、どうしてそんな硬い話し方なんだろう? きっと同い年くらいのはずだよね……?) よぉし! それなら全然問題ないよって伝えなきゃっ――』
最後の天啓『みんな、分かってくれてありがとう! 誰かを傷つけるような投稿じゃなければ、僕は全然オッケーだよ(OKサインの絵文字) どうか、好きなようにクラブも続けていってね! それじゃ、僕はこれで失礼します! みんなまた学校でねー!!(手を振る絵文字)』
ラヴァーズの最終反応。
『うぉぉぉぉ、ありがたきお言葉ぁぁぁぁぁ!!!(号泣の絵文字)』
『これでラヴァーズは公認クラブじゃぁぁぁぁぁ!!!(燃えるハート絵文字×3)』
『ぴえぇぇぇぇぇぇぇんっ!!!(笑い泣き絵文字)』
部長『恐悦至極に存じますぅぅぅぅぅぅ!!!(キラキラハート絵文字+天使の絵文字)』
彼らの様子を微笑まし気に見つめるエリスが、やがて満足してスマホを32番ちゃんに返そうとした寸前! 一通の『おかわり反応』が届くのだった。
とあるラヴァーの余剰反応。
『待ってくださいエリスさんっ!! せっかくここで会えたのですから、何か私たちに応援のエールをください!!』
間もなく二通目。『できれば写真がいいです!! なぜって私、まだ心のどこかで確信を持てずにいるからです!!』
すかさず三通目。『今話してくれた”あなた”が、『本物のあなた』であるという確信がっ!!』
神速入力で四通目。『誰かのイタズラだったら、死んでも死に切れません!! だからどうか……どうか写真を!!』
この発案に対し、他のラヴァーたちが悦喜して便乗する。皆一様に、『俺も、もし偽物だったらショック死する!!』とか、『突然胸が苦しくなってきました!! 今すぐ証拠をくださいエリス様!!』とか、『できればエッチなのがいいです!! 叶えてくださるなら、明日死んでも構いません!!』とか言って、余剰――いや過剰反応し始めるのだ。
そのあまりの熱量の多さに、エリスは困り果ててしまい、やがて32番ちゃんに許可をとったあげく、彼女のスマホで『自撮り』してみる決心をするのだ。彼の『わ、分かったから! みんな死なないでね? 約束だよ?』という返信が来た瞬間、チャット・ルームは感謝感激、雨あられ!! お祭り状態と化す(よもや、彼が『死ぬ』という脅しに屈しやすいこと知る者がいるのではなかろうか?)。そしてぇ――。
カシャリッ!! エリスは普段あまりしないセルフィー撮影を終え、特にそれを加工するでもなく、32番ちゃんに頼んで送信してもらうのだった(※圧倒的美貌を持つ彼が、率先して自撮りしないのは意外に思われるかもしれないが、単純に彼は、特別な記念以外で写真を撮る習慣がないのと、友達といるときも大抵は『その瞬間そのもの』を味わって生きているため、自撮りする機会が少ないのだ。とりわけ自分一人だけを写す『典型的な自撮り写真』など、これまで一枚たりとも撮ったことがなかった)。
正真正銘最後の啓示(ラヴァーズ視点)『ごめん。エッチなのはダメだったけど(※普通に恥ずかしいのと、本当に死人が出たら大変なので)、どうにか一枚撮ってみたから、今日のところはこれで元気になってね?』
そうして送られてくる高画質の画像ファイル。そこに写っていたのは、恥じらいながら上目遣いで微笑んでは、慎ましやかに片手を上げ挨拶している、どうしようもなく『萌え~♡』な状態の、彼の姿だった。
その日、E・ラヴァーズのチャット・ルームは、『潮を噴くクジラの絵文字』で埋め尽くされたと言う……。
エリスの高校休日㉞ 四六時中、魂はずっLOVE Be with you エターナル・ツイン・フレイムズ!!
そして今こそ、正真正銘の15時49分(時制も時系列もあべこべだなっ! そう言えば今までのシーン、”これまで”の出来事だったんだよな!? 思った以上にラヴァーズに翻弄されたようだなっ!)。ドアベルに誘われエリスが玄関に行くと、そこには意外な見舞い客の姿があった。それは現在休学中にして、ついさっきまで匿名の生徒たちに『魔女』呼ばわりされていた気の毒な女の子、『ソフィー』だった。
この思いがけない訪問者に、彼は「そ、ソフィー!!? やぁ、どうしたの? それにその格好……」と驚きをあらわにしつつも、すぐさま「まぁとにかく上がってあがって!」と、快く彼女を招き入れるのだ。彼が驚いた理由の一つは、普段休日にソフィーと遊ぶことは稀で、遊ぶにしても外でお茶するか、エリスが彼女の家に遊びにいくパターンばかりだったからだ。どうも彼女は、『自分から動く』のが苦手なようである(優雅さに欠ける”自転車”という乗り物が嫌いで、いつも父親に送迎してもらってるからこそ、”フッ重”なきらいがあるのだ)。
”そんな彼女”がだ。何と今日は限っては珍しく、『自転車に乗って一人で移動してきた』みたいなのだ!! 服装も普段とは打って変わって、スポーティーな装いに変わっていて、髪形もそれに合わせて『ポニーテール』になっている!! それこそが、彼が驚いた『もう一つ理由』だった――。
ど、どうしたんだろうソフィー……わざわざ訪ねてきてくれたりして……それにあの格好!! あんな”庶民的”なソフィー、見たことないよっ!! いったい、どういう風の吹き回しだろう……はっ、もしや! 何か重大な話をしにきたとか!? まさかダニエルみたいに、『モーザー学校をやめる』とか言い出すんじゃっ――。そんな懸念を覚えながらも、何気ない素振りで彼女を自室に導いていくエリス。「うわぁ~それにしても、ソフィーが来るのって久しぶりだねぇ~♪ 何年ぶりだろぅ~?」などと呟いてみるも、肝心のソフィーは押し黙ったままだ。その後も彼が、泣きそうになりながら独話を続けていると、その甲斐あってか、やっとこさ辿り着いた自室のドアを開けたところで、ようやく彼女が笑顔を見せてくれる――。
「あらっ、ここも随分と様変わりしましたわね! 昔は”あんなところ”に”あんな物”、なかったのにっ!(とてつもなくアバウトなセリフ!!)」そう言って彼女が指差したのは、部屋の隅に置かれた埃を被ったエレキ・ベース……ではなく、その横のカーテン・レールに吊り下げられた『洗濯物ハンガー』と、そこに留められた『洗濯物(下着)』の数々だった。
それを見たエリスが、顔を真っ赤にしてそれらを”取り込んで”いく。「うわぁぁぁぁぁ見ないでぇぇぇぇぇ!!!」さっきまでたくさんの来客があったにもかかわらず、ごく自然な日常風景すぎて、これまで彼は気づかなかったのだ(当然、客たちは気づいていたが、目の保養としてありがたく拝ませてもらっていた)。
ソフィー「どうしてそんなもの部屋干ししてるんですの? 乾燥機を使えばよろしいじゃありませんの?」
エリス(洗濯物をハンガーごとクローゼットに投げ入れてから)「だ、だって! 僕の下着は全部『綿100%』なんだもん! 乾燥機に入れたら縮んじゃうよっ!」ちなみに、そのハンガーに掛かっていたのは、靴下一足、水色のブラ、黒のドロワーズ、白のキャミソールだった。
ソフィー(下着ごときを大事にする庶民を憐れむような目で)「少しくらい縮んだっていいじゃありませんの? あんな”ダブダブなパンツ”なのですから」
エリス「あれは『あぁいうデザイン』なの!! ソフィーだって分かるでしょ!? 割と『プリンセス・アイテム』だよあれ!?」
ソフィー「それはそうとして、あれって『昨日の洗濯物』ですわよね? どうしてこんな時間まで干してあるんですの? こんな”日和”なのですから、さすがに乾いてるはずじゃ……はっ! まさかエリス! あなた……『今朝お漏らしした』んですのっ!!?」
エリス(全力おてんば男の娘モード)「してないよっ!!? ただ取り込み忘れてただけだよっ!!? ねぇやめないっ!!? この話、やめないっ!!?」
ソフィー(勝手に彼のベッドに座りながら)「はいはい。冗談ですわぁ。そうカッカしなさんなー」
エリスの心に住み着いたラヴァーズの残留思念『ま、魔女めぇ……』
「そ、それでぇ? ソフィーは何しに来たの? そんな、『珍しい格好』で」ついに彼が、彼女の服装について触れる。現在彼女は、下から『白の踝丈ソックス』、『デニムのショーパン』、『白の半袖無地Tシャツ(袖捲りしてノースリーブ状態)』、両手首に『紺色のリストバンド』、そしてポニテを結ぶ『桜色のヘアゴム』を装着している。相当頑張って”ペダリング”してきてくれたのだろう――その首元には汗の粒が光っている。
ソフィー「別にー。ちょっと気が向いたから、あなたの様子を見にきただけですわー。それで自転車に乗るから、動きやすい格好をしてきただけですわー。いけませんの? あなただって普段、こういう”機能的な服”着てるじゃありませんの?」
エリス「う、ううん! ただちょっと”珍しかった”から、聞いちゃっただけ! すごく似合ってるよ!」
ソフィー「それよりもエリス、もうお身体はよろしいんですの? 随分と元気そうですけど……(ジト目)」
エリス「う、うん! そりゃもう、おかげ様で(ヘラ~笑)(まだ懸念が晴れていないので、少し動揺している)。今日みんなから元気を分けてもらって、すっかり良くなったよ!(力こぶモリッ!) とても一人じゃ食べきれないほど、ジュースとか果物とか貰っちゃった(テヘへ☆)」
ソフィー「あら、ごめんなさい? ワタクシ、手土産のことはすっかり忘れていましたわ。ちょうど家に『アルフォンソ・マンゴー(インド産の高級マンゴー。4~6月が旬)』がありましたのに」
エリス「い、いいよいいよ! そういう意味で言ったんじゃないし! そんなことよりもソフィー、君、学校を休学になっちゃったんだよね? どういう経緯でそうなったの? あれからどうなったの? 君、全然連絡してくれないからさ……僕心配で心配で……」
ソフィー「とりあえず、『メンタルヘルス・プログラム』に参加することになりましたわ。それで昨日、早速『カウンセリング』を受けてきました。ここの隣町にある、『ル・シエル・ブルー』とか言う”ヘンテコ”なクリニックで」
エリス「えっ? ル・シエル・ブルー……? ってことは君、『セリーヌ』に会ったんだね!?(花咲くエリス) うわぁ~! そっか~♪(本日、満開エリス色!)」
ソフィー「あらっ? お知り合いですの? あの”ドクター”と」
エリス「知り合いも何も、『彼女は僕の恩人』だよ!! 去年”心を病んだ”僕を、助けてくれた大恩人! おかげで僕にも夢ができたんだっ♪ 『セリーヌみたいな立派なカウンセラーになりたい』って夢が!」
ソフィー「まぁそうでしたのー? ですけどぉ、彼女が”立派”って言うのは、よく分かりませんわ。かな~り”お間抜け”な印象を受けましたもの」
エリス「えーそぉー? 話してて気持ち、楽にならなかったー?」
ソフィー「えぇ、まぁ楽にはなりましたけど……彼女、取るに足らない世間話ばかりしてましたのよ? それに最終的に、『ワタクシの病名すら診断せず、お薬もくれませんでした』わ? てっきりワタクシ、『あなたは身体醜形障害で、薬物療法と認知行動療法の必要があります』とか何とか、言われるものと思ってましたのに!」
エリス「それなんだけど、彼女はカウンセラーであって精神科医じゃないから、『病名を診断したり、お薬を処方すること』はできないみたい。でも安心して! 彼女はプロだから、ちゃんとソフィーのこと考えてくれてるし、これから理論的・技術的なアプローチにも、入っていってくれると思うから!」とは言え、『箱庭ゲーム』はやめてほしいけどな……まぁ、ソフィーが”決闘”しているシーンは見たくもあるが(苦笑)
ソフィー「だといいんですが……正直、脳ミソを弄り回しでもされない限り、ワタクシは変われないと思いますわ……だって『認知』って、長い人生のなか培われてきた『ワタクシにとっての絶対的な真実(心理学ではそれを『自己スキーマ』と呼ぶ)』ですもの! 自分の知っている『正解』を論破できる気がしませんわ……ワタクシだって『バカ』じゃありませんもの……」
エリス「無理に変わろうとしなくたっていいよ……大切なのは君が、より楽で、より幸せになれる道を見つけることだから……僕だってね? 前々から『泣き虫の弱い自分を変えたい』って思ってるけど、今だに『泣いてばかりいる』もん(笑)」
ソフィー「いいじゃありませんの……『あなたには涙が似合います』もの……ワタクシ、”鉄仮面なあなた”など、見たくありませんわ(シュンッ……)」
エリス「うぇぇぇっ!!? ちょっ、酷くないそれぇー!!? 僕別に、『無表情な人になりたい』って言ってるんじゃなくって、『悲しみや恐怖に打ち克てる人になりたい』って意味で――」
「――充分なってますわよ……」
いつも以上に打ち解けた会話で、ついエリスが”生意気な口”を利いて反論してしまっていた矢先、ソフィーがいつになく”しおらしい”態度で、何やら呟くのだ……。そして不意打ちに戸惑う彼を余所に、どうやら彼女が本題に入るようである――。
「あなたはすでに、『充分すぎるほど強い人』ですわ、エリス……。だってその”強さ”にこそ、ワタクシは憧れ、嫉妬していたんですもの……。ずっとあなたのようになりたかった……けれど時が経つに連れ、ワタクシたちの差は開くばかり……。だから自暴自棄になってワタクシは、”あんなこと”をしちゃったんですの……。愚かでしたわ……『死んだってあなたになれるわけじゃ、ない』のに……」
エリス(すでに充分すぎるほどの強さで涙ぐみながら)「ソフィー……」
「あのとき、あなた言ってくれましたわよね……『ワタクシたちは一心同体、永遠に一緒だ』って……あの言葉、心に染み入りましたわ……人生で一番、幸せな一瞬でした……おかげでワタクシ、『死ぬのも生きるのも怖くなくなった』んですの……だから『ありがとう』ですわ、エリス……」
エリス(ある意味、泣き顔の鉄仮面と化しながら)「ソフィィ……! ソフィィィ……!!」
「そしてごめんなさい……たくさん酷いことを言って、辛い思いをさせてしまって……本当に本当にごめんなさいっ……。本当はあなたのこと……ずっとずっとずっとずっと、心の底から大好きでしたわよ、エリス……。これまでも……これからもずっとっ」
そこにあったのは、どこまでも果てしなく穏やかな、彼女の人生最高の『優しい笑顔』だった。これにはさすがの鉄仮面も、魂を融合させるがごとく親友に抱きつきながら、精一杯の愛を叫ぶしかないっ――。「僕だって君が大好きだよソフィィィィィィィ!!!(うえっぐ……ぐすんっ……)」
「い、痛いですわよエリスッ! ぐ、ぐえっ――」堪らず悲鳴を上げる親友だったが、なおも彼は抱きついたまま、彼女を圧殺せんとする。「もう絶対離さないからぁ~!!!」
ソフィー(いい加減死にそうになって)「ばっ、ちょっ、いいから放しなさいっ!!」彼女が強引に彼を引き剝がすと、彼は「で、でもぉ……”約束”がぁ……」と大粒の涙を懸命に拭い始める。これには溜息を禁じ得ない彼女。今こそ”目的”を果たすときだった――。
「ほんっとに”お馬鹿さん”ですわねぇ、あなたぁ……『永遠に一緒』だなんてのは言葉の綾で、『本当に四六時中一緒にいる』って意味なわけないでしょうが! それくらい、分かってて言ったんですわよねぇ?」えっ? そうなん? てっきりエリスとソフィーはずっとずっとラブ、『ずっラブ』なのかと……四六時中『ずっと Be with you』なのかと……。
エリス「そ、そうだけどさぁ……(涙)」
ソフィー「それにですわね、エリス? 今日ワタクシは、『あなたに伝えたいこと』があって来ましたの。さっきの謝罪と感謝とは別に、もう一つ大事なことをっ」
エリス(恐怖の瞬間が来たのだと悟りながら)「が、学校やめるなんて、言わないよねぇ……そんなの僕ヤダよ……」
ソフィー(予想の斜め上を行く彼の反応に戸惑いつつも)「いや? やめませんわよ?(キッパリ) でも、そうですわね……これは、ある意味では『卒業』ですわ。そう、『あなたの優しさからの卒業』! 聞いてくれるかしら……?」
エリス「僕の、優しさからの……? それってどういうことなのっ!!(何となく嫌な予感がして、声を荒げる彼)」
ソフィー(今にも暴れ出しそうな彼の両肩を抱き留めて)「いいこと、エリス……ワタクシはもう、『あなたのことは諦めます』わ……ですからもう、『あなたはワタクシの恋人にならなくたっていい』……ましてや『婚約者になんか、なる必要ない』んですの……これまでたくさん縛って、プレッシャーをかけてしまってごめんなさい……どうか自由に恋愛して、幸せになってちょうだい……ともすれば、ダニエルやキアラとお幸せに……二人にもよろしく伝えてちょうだい……あなたたちなら『ポリアモリー』、きっと実現できるはずですわ」
エリス(まさしく恋人にフラれた少年の目をして)「何だよ、それっ……結局全部君の都合じゃんかっ!! そうやって君はいつだって、僕の気持ちを蔑ろにするんだっ!! 酷い! 酷いよっ!! それじゃまるで、『僕が無理してる』みたいじゃんかっ!! 僕は本当にっ……本当に君のことがっ――」
ソフィー「――えぇ分かってますわ、それくらい……もちろん分かってる……でも、だからこそワタクシは、『このままあなたに甘え続けるだけの自分ではいたくない』……『自分も愛されてる』って気づけた今だからこそ、ワタクシも『自分だけの強さ』を手に入れたい。『自分だけの人生』を、歩んでいきたい……だから、ね? 『別れましょ、ワタクシたち』……」
エリス(不満そうに、寂しそうに)「ソフィィッ……」
ソフィー「なぁに、心配いりませんわっ。ワタクシたちはずっと『最高の親友』同士! 何せ『永久に魂で繋がってる』んですものっ!! そうですわよね、エリス?」
エリス(永久にベソ掻きながら)「う、うふぅんっ……」
ソフィー(挑発的に)「なぁんですのその返事はぁ? やっぱりワタクシたち、『ソウルメイトじゃなかった』のかしらねぇ? 『”エリスくん”、嘘つき』だったのかしらねぇ?」
エリス「嘘なんかじゃないっ!! 僕はっ……僕たちはっ――」
「悠久の二つ星だっ!!!」
その荘厳な宣言を聞いた途端、あろうことか彼女は、大爆笑し始めるのだった……。「ぷっ、ぷぁははははははははっ――」これには言った本人も大ショックだ。うぇっ、うえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!? ここ笑うとこぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!? 間もなく彼女が喋り出す。「にゃ、ニャンですのその『バカみたいな名前』はっ――あはははははははっ!!」酷すぎるな、おい……。
エリス「だ、だからっ! 『ツイン・フレイムズ(Twin Flames)』だよ!! 『双子の魂』って意味のっ!! 僕の好きな『Epica』ってバンドの曲で、そういうタイトルの楽曲があるのっ!! だから咄嗟に出てきたのっ!! 悪いっ!!?」
ソフィー(笑い上戸と化しながら)「だからって、わざわざ『エターナル』まで付けて使わなくても――ひっひっひっひっ――ワタクシが先に『魂の伴侶』ってストレートな呼び名出したんですから、そのまま復唱すればよかったじゃないですの――つ、ツイン・フレイムズ……(クスクスクス)」
エリス「もういいじゃない呼び名なんてぇ~。意味は同じなんだからさぁ~。ソフィーは僕とじゃ嫌なのぉー? ETFー」何やその指数に連動しそうな頭文字略は……。
ソフィー「い、嫌じゃ、ないです、わよっ――ぶふぁっ」
エリス「なら言ってみてー? 僕たちは何なのぉ? 3秒以内にー」
ソフィー「え、エターナル……つ、ツイン……ダメですわぁははははははっ、馬鹿らしくて言えませんわぁはははははっ」
ダメだこりゃ……もう収拾付きそうにないので、ここらでエピソード終わらせますよ君たちーっ!! いいですねぇー!!?
エリス「なら『エターナル・ソウルメイト』だっ!! これなら言えるんじゃない!?」
ソフィー「もちろんですわっ! エターナル・ソウル――ぷっしゅー!!」
”レッドフラッシュ”でも切れたのか”そふぃ”やい……と、こんな感じの茶番が日が暮れるまで続きましたとさ。お終いおしまい。
ひや~やっと終わった~。やっぱ長いねぇ~1万8千文字はぁ~。
↑こういうこと書くから、さらに感動が台無しになる。今まででいっち番酷い終わり方だわ……。
第五十六章 – 青春時代② 高校生活 Ep.43:Hearty: Friends Forever!!~心友よ永遠なれ!!~ Part1
番外編⑫ Human(ヒューマン): Flash(フラッシュ) Flood(フラッド)
『ダニエルの宣戦布告』に端を発した”さまざまな騒動”から丸1週間が経過した、2042年4月26日(土)。その日エリスの幼馴染『ニコラ』は、午前中からずっと自室に籠って、来週行われるテストに向けた対策勉強をしていた(ギムナジウム生は、かなりの頻度でテストがある)。
もともと、将来に対するハッキリとした夢のない彼だったので、高校を卒業して大学入学資格を取得してからは、安定の『ローザンヌ大学』の『経済・経営学部』にでも進学して、学士号か修士号を取った後に、『銀行』とか『保険会社』とか『不動産会社』とか『コンサル会社』とかに就職するんだろうとな、と言う漠然としたヴィジョンだけを持っていた。
ただ、その先の未来に関しては皆目見当もついていなかった。自分も他の人々同様、誰かと結婚して家庭を築くのだろうか? そしてパートナーとの間で子供を授かって、何児かのパパになるのだろうか? 『恐らくそうなるんだろうな』『自分は割と世渡りが上手いから、何だかんだ幸せになれるんだろうな』そんな自負こそある彼だったが、どういうわけか、ここしばらく幸せというものを感じてない気がした。生活に満足していない気がした。
事実、ここ1週間の彼は不眠気味だった。それに今日だって本当は、友達から遊びの誘いを受けてはいたのだが、『気が乗らない』と言って断ってしまったのだ。昔は無邪気に毎日を楽しんでいて、日が暮れるまで外で友達とスポーツしたり、屋内でビデオゲームに明け暮れていたはずなのだが、最近はそうしたことをめっきりしていない。思春期特有の気分障害だろうか? 心が過渡期を迎えたことで趣味趣向が変化したのだろうか? いや、認めたくはないが……もっと直接的な原因があることは、分かっていた――。
先週、大親友にして最愛の人『エリス』が、同学年の男子生徒『ダニエル』と付き合っていて、オマケに『初エッチまで済ませた』という知らせを受けてからというもの、彼の心の歯車は大きく狂ってしまったのだ。いや、率直に言えば歯車はすでに狂ってはいたのだ……去年、エリスが『大事件に巻き込まれて、右脚を失った』ときから……。
あの日以来、ニコラの心には次のような観念が芽生えてしまった。
『自分の知らないところで、取り返しのつかない嫌なことは、確実に起こっている』
『自分は大切な人一人守れない、弱い人間である』
そのうえ、先週の件で新しくこんな観念も加わった。
『自分は親友から”親友”としてしか見られてない』
『自分は負け犬だ。端っから告白する勇気すらなかった』
そう……彼の心のザワつき、その正体は、端的に言えば『未来への恐怖』、そして『失恋の痛み』だった。たとえ根拠のない、あやふやな未来であっても、『楽しみだ』と思える何かがなければ、それは一変して『恐怖の未来』へと変わる。そんな恐怖に心を支配された人間が、そう長く戦い続けていられるわけもない――ついに彼のストレス耐性も、限界を迎えてしまうのである。
チックショウ……未来が何だってんだっ……恋が何だってんだっ……こんな、俺らしくもねぇ……楽しいことしまくって、嫌なことなんか忘れちまえやっ――。そう思い立って、机の教材を閉じ、椅子から立ち上がった彼は、手始めに昨日誘ってくれた友達に連絡してみることにした。プルルルル、プルルルル♪ ガチャッ――。呼び出してすぐに電話に出てくれる友達。「おう、どうした?」
「おっす。いや、ちょっと羽目外したい気分になって……今何してる?」ニコラが聞くと、友達は「マジか。俺らはこれから映画見るとこ。もうちょいで上映時間だから、そこから2時間はかかると思うわ。もしあれなら、その後合流する?」と答えてくれる。咄嗟にニコラが時計を見ると、現在時刻は15:33だった。2時間後であれば17:40くらいである。何となくだが、面倒くささが勝った。
ニコラ「んー。なら今日はやめとくわ。また今度遊ぼう。映画楽しんで」
友達「おー! 今度『ボウリング』か『レーザー・タグ(※レーザー銃を使ったチーム対抗シューティング・ゲーム)』でもしようぜー!」
ガチャッ……。早々に出鼻を挫かれ、途方に暮れるニコラ。自分から断っておいて、すでにちょっと後悔してもいた。あっちゃー……別に17時からでもよかったか……むしろそのくらいの時間からの方が、バカ騒ぎし甲斐があったっちゃあったしな……潔く夕食に誘やよかったわ……けどまぁ、やっぱ今日はいいか……何かもうめんどいわ――。
スマホをベッドに放って、本格的に次の活動を決めあぐねる彼。何かビデオゲームでもするか? あっ、あの前にやってたアレ何だっけ? あの、『フニャフニャした人間の不思議アドベンチャー・ゲーム』……うーんと……そうそう! 『ヒューマン フォール フラット(Human: Fall Flat)』! あれ久しぶりにやってみっか? 確かあれ、中盤の方で止まってたようなー? って……そうか……あれ去年、『エリーとやってた』んだった……勝手に進めたらエリー怒るかな……? いや、たぶんもう覚えてないだろ、やっちまえっ――。
部屋のPCを起動し、続いてゲームを起動するニコラ。久しぶりなのでアップデートにしばらくかかり(彼が起動したのはシリーズ四作目の最新作)、やっと辿り着いたメニュー画面から『オンライン・プレイ』を選択し、自分がホストになって続きのステージから協力プレイ募集をかける。するとすぐさま一人仲間が加わってきて、彼はその誰かさんと未知なる『フニャフニャ・ワールド』へと旅立つのだった。
「えぇっと、どれどれ~? どんなステージからなんだ~?」恐らくまだ一度も挑戦してないステージに降り立って、早速フニャフニャ・ボディで探索を始める彼。一緒に冒険してくれる仲間と軽く挨拶を交わして(ジャンプしたりハイタッチしたりして)、目についた面白オブジェクトに向かって共に進んでいく。道中、バカみたいに変な動きを繰り返す仲間……それを見た瞬間、思わず彼の顔に笑みが零れるのだった。「ははっ、何じゃその動きw おもろww」
ふと思い出す、1年前の親友とのひと時……。そう言や、エリーもあんなふうに”はしゃいで”たっけ……アイツ、バンドとか空手とかで忙しくなってからも、たまに俺んとこ遊びにきてくれてたよな……。
1年前のエリス「あはっ! 僕フニャフニャ~♪ ニコもフニャフニャ~♪ ぴょ~ん、ぴょ~んっ! むむっ、何か発見! あの積み木は僕の物だ~!」
できれば、あんな日々が一生続いててほしかったわ……時間が戻ればいいのに……そんで止まればいいのに……何で人生はリセットできないんだよ……理不尽すぎるだろ――。
ツー……。気づけば彼の頬を、ひと筋の涙が伝っていた。かと思えばもうひと筋……そしてもうひと筋……それは言わば、心の悲しみが限界を超えたとき突然と襲いくる、『人間:鉄砲水』と言うべく現象だった。
コントローラーを机に置いて、その水にさらわれないよう懸命にしがみつくニコラ。ゲーム画面では仲間が、突然動かなくなった彼を心配して途方に暮れている様子が確認できる……その仲間は、しばらくニコラのキャラクターを突っついたりよじ登ったりした末に、やがて別のサーバーを探してワールドを離脱していく。
ニコラはひと通り感情の鉄砲水に撃たれた後、静かにゲームを終了するのだった。
番外編⑬ Human(ヒューマン): Fetch(フェッチ) Fluid(フルイド)
PCをシャットダウンしたニコラは、全ての鬱憤を晴らすかのように、数週間ぶりの『自慰行為』に興じていた。要するに心の不満を全てを、性的な『流体』に変換して、身体から『取り出そう』と考えたのである(二重の意味で、無理やりすぎ!)。”オカズ”にしているのは、もちろん、大好きなエリスのこと……ちょっと妄想するだけで、”パイプ”から”お汁”が溢れ出してきた。
ちっ、くしょう……みんなして俺からエリーを奪っていきやがる……あぁそうだよ! 全部悪いのは俺だ……俺がもっと早くアプローチしなかったから……ひっぐっ……失って初めて気づいた……え、エリー……やっぱ俺、お前がいないとっ――。
開始早々から、ヒートアップする手付き。脳が性的な妄想に、完全に支配されていく。や、やっべぇ……久しぶりだから、すぐ、イッちまいそう……エリー……エリーッ!! ふと浮かんでくるのは、先週行われたという『エリスとダニエルの初エッチ』、その想像の模様……親友は後日、そのとき何をしたかまでは教えてくれなかったが、ひと言『気持ちよかったよ』とだけ答えてくれた。
ってことはつまり、去年目撃した『自慰に耽る彼』以上に、たくさん乱れていたであろうことは自明の理!! 恐らく三回……いや四回はイッてるはずだ!! こんっ、ちくしょう……そんなにアイツの方がいいのかよ……そんなにアイツの、”チンポ”の方がいいのかよっ……お前、見たことないだろうけどさ……俺のだって”この状態”のときは、結構”デカイ”んだぜ……試してみてくれやっ――。悔しさと興奮を同時に捏ね繰り回しながら、ニコラは快楽を貪っていった。
と、そのとき! 彼のスマホに着信が入る。メッセージ・アプリからの着信なので、音だけでは誰からかは分からなかったが、反射的に彼が横にあるスマホを覗き込むと、そこに『Ellie』の五文字が記されていた。まさかまさかの、エリス本人からの着信だったのだ。これにはとてつもない喜びと、とてつもない迷惑さを感じずにはいられないニコラ。一瞬、電話を取ろうかと思う彼だったが、もう少しで『Horny:Final Finish』だったので(Hは”Hentai”でよくね……?)、一旦無視することに決めたようだ――。
ちょっ、ちょい待っ、エリーッ……今は無理だわ……イマ俺、”すんごく忙しいから”っ……あと5分待っててくれな? なっ!?(そこはかとない、既視感……笑) そして以心伝心でもなんでもない必然の結果として、電話は切れ、彼はホッとひと息吐いた後、気を取り直して”快楽ゲージ”を溜め直していこうとする……が、それもつかの間! さらなる試練が”彼のもとを訪れる”のだった――。
ピーンポーン♪ 今度鳴ったのは、自宅のインターフォンの音だった。ニコラは『勘弁してくれ』と思いながら、聞き耳を立てつつ、文字通り”慰める”かのように己のペニスを摩っていく。おぉ……可哀そうなマイ・ペニスよ……もうしばしの辛抱だからね……? とでも言うかのように(想像)。やがて在宅中の誰かが来客の対応をし、すぐに嵐は去っていくかに思われた……しかし――。
「おーい、ニコー! 『エリスちゃんが遊びにきてくれた』ぞー!! いるかー!?」唐突に階下から響いてきたのは、来客の対応に当たっていた彼の『父親の声』だった。それを聞いた瞬間、彼の身に途方もない緊張が電流のごとく走る(同居人の声ほど萎えるものない)。しかもその来客というのが、あろうことか今、脳内でオカズにしてしまっている『エリスちゃん』なのだから、いよいよもって一大事だ――彼は瞬時に衣服を纏って、身なりを整えては、階下に向かって「う、うーん、分かったー」と返事するのだった。
エリスの高校休日㉟ Happy(ハッピー): Frosty(フロスティ) Felicity(フェリシティ)!! & Harmonic(ハーモニック): F(エフ) Flat(フラット)!!
その日エリスは、午前中からずっと、かなりの期間ご無沙汰だった『ある活動』に励んでいた。そう……先週キアラと交わした『バンド活動再開』の約束……そのための第一歩として、久しぶりにエレキベース『フロスティ』との、感動的な”再会”を果たしていたのである。まず手始めに、埃まみれになった彼の身体を”拭きふき”していくエリス……これには1年以上も”封印”されていたフロスティも、大喜びで”饒舌に戻る”のだった。
『僕ちゃん感激っ!! またエリスに触ってもらえるなんて♡ また一緒に気持ちよくなろうね、エリスッ!!』by フロスティ・リボーンズ
エリス(相棒の声は聞こえずとも)「ごめんね、フロスティ……長い間、君をほったらかしにしちゃって……また僕と演奏してくれる? 今度はもっと上手に、君を”輝かせて”みせるからさ……(フキフキ)」
『僕ちゃんもうピッカピカ!! そのローション(たぶんポリッシュのこと)もっと付けて!! もっとスベスベにして!!』by 復活の「F」
エリス「ふふっ、よしっ! 綺麗になったねフロスティ! 待っててっ、今、弦も交換してあげるからっ――(ガサゴソ)」
『僕ちゃん”爪切り”ちょっと苦手っ!! でもエリスがしてくれるなら我慢するっ! さぁ、ひと思いにやっちゃって! パチンと! パチンとっ!!』by コーン・フロスティ=モドキ(←ヤケクソ)
エリス(ベース教本を読みながら)「えぇっと、まず弦の張力を緩めてから、ニッパーで一本いっぽん切っていく、っと……」※弦交換するのは、彼にとってこれが初めて。フロスティを買った当初についてきた弦がほぼ新品で、去年までエリスは丁寧に手入れを行っていたので、そのまま使い続けていた。
『ニッパーで怪我しないようにね? あとちゃんと弦緩めてから切らないとダメだよ? じゃないと切ったときに弦が跳ねて危ないからね――ってそこっ!! イイッ!!♡(※彼はペグのところが他のベースよりも敏感)』by フロステッド・フレークス(←コーンフロスティの米国名)
*
そうして無事、弦を交換し終えたエリスたちは、早速リハビリと仲直りを兼ねた演奏に入っていくのだった。※なお、弦交換やシールド・ケーブル挿入に際して、その都度フロスティが悶えていたのだが、今回は泣く泣く割愛する。ペグ・フェチやコネクタ・フェチの人に満足してもらいたかったので、非常に残念だ……(←by ○○がネタ切れしただけ)。
二人が最初に取り掛かったのは、何はなくとも基本の『スケール練習』だった。大分ブランクもあったので、ゆっくりしたテンポで丁寧に勘を取り戻していくエリス。BPM60の8ビートでメジャー→ナチュラル・マイナー→ハーモニック・マイナー→メロディック・マイナーと進んでいき、稀にちょこっとミスしながらも、概ねフィンガリングの感覚と楽器演奏の楽しさを想起することに成功した。
そしてビートを16ビートにして、再度初めから繰り返していく彼。それが済んだら、今度はテンポを20上げて挑んでいく。こうなったらもう、彼の――いや彼らの勢いは止まらない! 旧友との再会は初めこそ余所余所しいものだが、一度心を開きさえすれば、ほんの一瞬でまた、”あの日”に戻れるものである!
そしてさらに20上がり……あの日に戻っていく……情熱が、蘇ってくる……。
「やっぱり僕ら、最高のパートナーだねフロスティ! だから言ったでしょ☆ 『君はこの世の光』だって♪(”You are the light of the world,” I said)」ハートビートを弾ませたエリスがそう言うと、”エッチビート”を刻み続けるベースが、悶絶必至の叫び声を上げる。
『ぼきゅっ――ちゃんっ――ひかりゅっ――ひかりゅっ――んっ――んんっ♡」by 朝から楽して腹を満たしたいという煩悩の塊(それコーンフレークやないかぃ!! 結局お前はケロッグの回し者やないかぃ!!)
エリス(BPM100に突入し)「まっだまだー!! ここからが正念場だよー!! 一緒に光に手を伸ばそう!!(Let’s “Reach Out for The Light”!!)」
『ひきゃって――ひきゃりにっ――てをっ――のばしゅっ――うっ――うんんっ♡』by シスコーン・フロスト(それもコーンフレークやないかぃ!! 別のっ!! みんなモロコシの薄片に砂糖水を吹き付けるの好きすぎでしょ!!)
※謝辞:本日はいつになく、横文字が多くなっております。
エリス(BPM120に突入し)「さらなる難関だよっ!! でもここを超えれば光に並ぶ!! だから恐怖を捨てて宇宙を信じてっ!! 超越の光っ!!(Light of Transcendence!!)」
『ちょうっ――えちゅっ――しゅりゅっ――のっ――ぼきゅちゃんっ――ちょうえちゅっ――しゅりゅっ!!』by シスコーン・フロスティ(合体したコーンフレークやないかぃ!! 浮かんでくるのは腕組みした黄色いトラと、はしゃいでる可愛いらしい幼児の顔だけやねんからぁぁっ!!!)
エリス(自己新のBPM140に突入し)「さぁ、ラスト行くよっ!! 光よりも早く!!(Faster Than Light!!) 憎しみの光を越えろっ!!(Overcome the “Light Of Hate”!!)」
『ぴかり――にょりも――激しくっ――イクッ――イクッ――イクゥゥゥゥゥゥゥッ!!!』
あまりに強引なコーンフレークネタの多さに(あと謎の光ネタも)、私と読者様がちゃぶ台をひっくり返そうとしていた矢先、終わりは呆気なく訪れるのだった……。
びぇんビェンびぇんビェンびぇん――ピェンッ!! びぇんビェンッ♪ ちょうどエリスが、4弦4フレットから始まるG#メジャーを弾いていたとき、間違って第6音のFの音(小指で押さえる3弦8フレット)を、フラットさせてしまったのだ!(スケール構成音的には、正しくはE#がEナチュラルになった)
それは第6音が半音下がる、『G#ハーモニック・メジャー』というスケールだった。つまりは何が起こったのかと言うと……今、まさしく、この瞬間……『Harmonic: F Flat』現象が起こったのだっ!!(辻褄合わせのためだけに用意された展開……いい加減”ふにゃべえ”から離れろや……)
そしてその余波は、エリスは元より、フロスティの絶頂レベルにも波及する!!
エリス(最後の最後でミスしたことを悔やみながら)「うわぁぁぁぁ~、やっちゃったぁぁぁぁぁ~!!! もうちょっとだったのにぃぃぃぃ~!!!」
一方フロスティは、完全に意識が飛んでしまったようだ。その感覚は、言うなればそう! 『Homer: Foul Fly』だった!!(※ホーマー=野球のホームラン)(どないやねんそれ……客席まで飛ぼうが邪飛は邪飛だろ……何でそれでイッてんてフロスティww)
エリス(相棒を優しく抱きしめながら)「でも、僕たち頑張ったよねフロスティ……またいつかのライヴに向けて、これからもよろしくね……だぁ~い好きだよっ……(ムギュッ♡)」
ハッピー・フロスティ・フェリシティ『ふぁっ、ふぁぁぁぁい……♡』
こうして無事、”よりを戻す”ことに成功したエリスとフロスティ。二人はその後も、ヴァルキュリア・セレナードの曲をひと通りおさらいしたり、メタル・バンドの曲をカヴァーしたりして、たくさん”仲直り”した。フロスティは長すぎる放置プレイから解き放たれ、よもやクリスマスとお正月と誕生日が一遍にやってきたかのような絶頂を、その日のうちに味わったのだった。めでたしめでたし。
そして15:22。満足したエリスが相棒をスタンドに返したところで、いよいよ事態が動き出す――彼がニコラの家に遊びにいく準備を始めたのだ。と言うのも、最近どこか様子がおかしかった親友のことが、急に心配になったのである。しかし彼自身も知らなかった。まさかこのありふれた思い付きが、13年来の親友との関係を、少しだけ変えることになろうとは……。
エリスの高校休日㊱ Hearty: Friends Forever!!~心友よ永遠なれ!!~ Part1
「お、おっす……」エリスが家を訪問して間もなく、何やら挙動不審な様子で、ふらつきながら一階へと下りてきたニコラ。それ見たエリスが、俄然心配しながらも、それを表に出さないようにして元気に答える。「やぁニコ! 突然ごめんね? ちょっと、久しぶりに遊びたくなっちゃって、来ちゃった☆ もしかして、都合悪かったかな?」
ニコラが答える。「あいや、別に……ちょっと最近不眠気味で、さっきまで勉強してたりしたからさ……頭ボーッとしてて」
すると、まだ傍にいたニコラの父が、息子に喝を入れる。「何でぃ、若いもんが不眠とは情けねぇ! ほらっ、せっかく”エリスちゃん”が来てくれたんだから、シャキッとしんね! シャキッと!(江戸っ子なのか北陸っ子なのか分からない喋り方)」
エリス「に、ニコのお父さん! そう言わないであげてください! 勝手に来たのは僕の方ですからっ」
ニコ父「そ、そうかい? じゃまぁ、”邪魔もん”は引っ込むとするよ。お二人さん、ごゆっくり~」”のれん”を潜ってリビングへと消えていく父――って何で欧州の一般家庭に”のれん”があんねん!! まぁいいか、細かいことは……(よっ!粋だね!スイス一!)。
エリス(気を取り直して)「体調悪いなら、出直そうか?」
ニコラ「いやっ、体調が、悪いって、ほどでは……ただ、何て言うか、ボーッとしてて」彼はガチで苦渋の選択を迫られていた。エリスが遊びにきてくれたのは嬉しい。一緒に楽しいこといっぱいしたい気分ではある。けど……けどっ……今はタイミングが悪いっ!! ずっと精巣の中で行き場を失った精子たちが、『出してくれ~出してくれぇ~』と、身体を疼かせているっ!! この状態で何食わぬ顔をして過ごせるだろうか? いやっ、やるしかないっ!! 男だろ、ニコラッ!! 全てを覚悟した彼が、続ける。「まぁ、とりあえず、上がってけよっ」
エリス(大分無理させてしまっていることを察しながら)「う、うん……なら、お言葉に甘えて――」
そうして、二人して二階にあるニコラの部屋に向かっていく……(※この作品に登場する子供部屋はいつも二階にあるが、割と全世界的に、一般家庭はそうなってる場合が多い。一階はセキュリティ的に弱いので)。その最中、必死にペニスが再勃起しそうになるのを抑え込むニコラ……。エリスとは長い付き合いだが、自分の”そういった面”を一度も見せたことがなかったので(少なくとも物心ついてからは)、今さらイメージを崩したくなかったのだ。
くっ……頼む、今は治まってくれ……でないと俺は終わる……鎮まれ、鎮まれっ……クッソッ……何をそんな期待してんだ俺は……エリーはただの幼馴染っ……幼馴染だろうがっ……それにアイツには、もう恋人がっ――。部屋に着いて、親友を招き入れてやると、擦れ違い様、鼻孔をくすぐる親友の甘い香り……その瞬間ニコラは悟った。『もう無理』なのだと――やっ、勃っ、勃つっ――。
一方エリスの方も、部屋に入った途端、そこに微かに充満している”エッチな匂い”に気づいて、親友の置かれている状況を瞬時に悟った(※精子の匂いは、先週ダニエルからたっぷり教え込まれたので)。咄嗟に相手の股間に目を走らせ、そこでムクムクと大きくなる”膨らみ”を捉えてから、すぐさま目を逸らす。
それとほぼ同時に、ニコラが下腹部を押さえつつ前屈みになって、「す、すまんっ……ちょっと腹痛いからからさ……トイレ行ってくるわっ――」とエスケープしようとするも、何を思ってか、エリスがその手を掴んで、彼を引き留めるのだった――ガシッ。怯えた表情を浮かべるニコラ……。咄嗟に何か言おうとするも、あまりのことに二の句が継げなかった……。
エリス(気まずさをグッと堪えて)「あ、あのっ……もしかしてだけど、ニコ……『オナニー』、してた……?」
ニコラ(内心終わったなと思いながら)「あっ、あぁ……まぁな……俺もいちおう、人間だし……男だし……」
エリス「そっか……ごめんね? 僕、”マズイ時”に来ちゃったんだね……君の様子、変だって気づいてたのに、図々しく上がり込んじゃって……」
ニコラ「別にっ、こんなん、大したことねぇし……それに俺だって、お前の『やってるとき』に、行っちまったことあるし……お互い様だろ……」
エリス(あの日のことを思い出して恥じらいながら)「も、もう! あれは忘れてよ! 僕、今だに引きずってるんだからねっ(照れ怒り笑い)」
ニコラ(親友の手の温もりを感じながら)「……」
エリス「それじゃあ、その……『僕、一旦部屋から出てるから』さ。『君のそれ、解決してから遊ばない』? そのままじゃ君、辛いでしょ……?」
全くもって予想外の反応だった。いや、エリスが幻滅したりしないことは分かり切っていたことではあるが、まさかここまでライトな反応だと思わなかったのである。しかしながらそれは、同時に、『彼が自分を性的に意識していない』ということの表れでもあった。そのことがニコラの心を、さらに傷つけるのだった――。
ニコラ(いろんな意味でプッツンして)「あっそ。なら別に、『出てなくたっていい』よ。俺これ、すぐ終わらせるからさ。エリーはその辺でくつろいでれば?」
エリス(言われた意味が分からずとも、親友が激怒していることだけは感じ取って)「えっ? 『終わらせる』って、”ここで”ってこと? どうしてそんなことを? 君だって見られるのは恥ずかしいでしょ?」
ニコラ「別に? ってかむしろ”見てて”くんない? 『俺だけエリーの見たことあるのは不公平』だし、どうせお前、『男の裸なんか見慣れてる』んだろ?」
エリス(若干痛いところを突かれて、逆ギレ気味に)「はっ? 何それ? 僕別に、『誰の裸も見慣れてなんかない』し、君がもし『ダニエル』のことを言ってるんだったら、見当違いも甚だしいよっ! 僕たち、『先週初めてエッチした』ところなんだもん!」
※今日は『別に』が多いですが、思春期の若者の話し言葉には頻繁に登場する、一種のキーワードみたいなものです。
ニコラ(完璧にキレながら)「はぁ、さいですか? まぁどっちでもいいっすわ。『童貞』の俺には関係ないことっすからね? 及びの付かないことっすからねっ――」とうとうベッドに座って、パンツを脱ぎ始める彼……(※ちなみに『どっちでもいい』『どうでもいい』が、思春期流行語ランキング堂々のNo.1!!)「じゃあまぁ、出ていきたいなら出ていけば? たぶん一瞬で終わるとは思いますけどね――」そうして彼がアンダーウェアを下ろすと、『ヌラヌラになったペニス』がエリスの目の前に姿を現し、まるで挨拶を交わすかのように、ピクピクと痙攣し始めるのだ。
恥じらいと怒りを同時に覚えたエリスが、顔を上気させたままこう返す。「何でそんな怒ってるのか知らないけどっ、そんなこと言うんだったらもう知らないよっ、ニコなんてっ! じゃあ僕、もう『帰る』からっ! どうぞお邪魔しましたっ――」そうして彼が、ドアノブに手を掛け、二人の関係至上”一、二を争う”ほどの激しい喧嘩別れをしようとしたその瞬間、親友が囁いたその言葉に、エリスの思考は完全に停止するのだった。
「好きだっ……エリー……」
驚いた彼が、ゆっくりニコラの方を振り返ると、どういうわけかそこで、『親友が自分の名前を呼んでいた』……夢中でペニスを扱きながら……何度も何度も……切なそうに……愛おしそうに……。「エリーッ……エリーッ――はっ――くっ」その様子は、とても冗談やイタズラのようには見えなかった……だからこそエリスは、なおのことその意味が分からなかったのだ……。だって彼とは、本当に幼い頃からの付き合いで……これまでどんなことでも一緒にやってきて、どんなことでも相談できるほどの仲だったからだ……。
そう……もはや彼らは、『家族』にも等しい間柄だった……そんな相手に、恋愛感情なんて抱くものだろうか? ましてや自慰のときのオカズになど、するものだろうか……? エリスは必死に考えたが、その答えは出なかった。
ただ一つ言えることは、彼は『想像すらしてなかった』ということだ。自分たちが互いに”恋愛感情を向ける”なんて状況を……(※確かに彼は、去年自慰行為を行ったときには、『ニコラ』の名前も出していたが、それは『身近な友達の一人』として出したにすぎず、そこに恋愛感情があるわけではなかった)。
だからこれは、ちょっとした『意識変革』だったのかもしれない……だって、そうじゃなければ『説明』がつかないではないか? 今、目の前で名前を呼んでくれている親友のことが、どうしようもなく愛しく思えて……呼ばれていることが、こんなにも嬉しくて思えて……つい自分もペニスを勃起させては、それを扱きたい欲望に駆られていることへの、もっともらしい説明がっ――何とか踏みとどまった彼は、それからドアのところにへたり込んでは、親友の自慰する姿を見つめ続けることしかできかった。
「好きだっ、エリーッ……好きっ……好きっ――ふっ、うあっ――」
皮が剥け、いきり立っているペニスの先端から、”愛の流体”が溢れ出してくるのが見える……エリスの方も同じで、パンツの中で痛いくらいに勃起したペニスが、否応なしにピクピクと愛液を送り出してしまっていた……それはドロワーズの綿生地に染み込んでいき、言い訳不可能なほどの大きなシミとなって広がっていく。
やがて親友の行為がラスト・スパートを迎え、その息遣いと声のトーンが上がっていく。「”エリス”ッ――好きっ――俺っ――もうっ――イッ――イイッ――イクッ――イクッ――イッ――」
「イクゥッ――」ビュクッ――ビュクッ――ビュゥークッ――。そうしてクライマックスが訪れ、放たれる無数の種たち……三つの流体が宙に放物線を描き、虚しく床に落下していく――パタパタ、パタッ……。続いて流れてくるのは、黯然銷魂としたニコラの悲し気な涙……それは少なくともエリスでさえ、これまで見たことのないような種類の、親友の涙だった。「ハハッ……ついに見られちまったな……俺の『恥ずかしいところ』……。そうさ? 俺はいつもこうやってオナッってんだよ……AVとか、マジでいらねぇ……そんなん見ると逆に萎えるからさ……とにかく俺は、たとえ妄想でも……『好きな人』と繋がっていられれば、それでいい……そんで好きな奴ってのは、お前だ、エリー……」
同じように、消魂したまま涙を垂れ流すエリスが、消え入りそうな声で「どうして……いつから……」と囁く。自分がダニエルに告白したとき、ダニエルから言われた言葉とほぼ同じだった。結局のところ、相手の恋愛感情に気づかなかった者は、まずそこから知ろうとするのである。
ニコラ(ティッシュで己のペニスを拭いながら)「さぁ……分かんねぇ……けどこうやって”妄想”するようになったのは、割と最近だわ……12、3歳くらいのときからかな……それを”最近”と言えるのかは、怪しいとこだけど……」
エリス(ちょっと理解が追い付かず、気分が悪くなりながら)「言って、くれればよかったのに……そしたら僕だって、もっと考える余裕とか……あった、と思うし……」
ニコラ(続いて床の精液を拭きながら)「言えるわけねぇだろ? 俺たち『男同士で、幼馴染』なのに……。だからずっと内に秘めてたのによ……お前15になってからホルモン治療始めたりしてさ? どんどんどんどん可愛く、大人っぽく成長してったりしてさ? おまけにダニエルとかソフィーとかキアラとかテムバとかカイトとか……わけわかんねぇくらいの人数から好かれてたりしてさ? それでどうやって告白しろってんだ……どうやって気持ちにケリ、つけろってんだ……」
「それでも、言ってほしかったよ……だって僕、君に無神経なこと、いっぱいしちゃってたかも……」髪の毛をクシャクシャにして蹲るエリス……考えるべきことが多すぎて、頭がどうにかなってしまいそうだった。
ティッシュをゴミ箱に放ったニコラが、身なりを整えながら続ける。「さて、俺はもう『終わった』けど、どうする……? これから何かして遊ぶか? ゲームでもする? 去年やってた『ヒューマン フォール フラット』とかどう?」
だがエリスは答えない。まだサナギのように丸まったままだ。それを見たニコラが、寂しそうにこう続ける。「それとも……もう『俺のことなんか、友達とは思えない』か……? 『絶交』したい、か……?」
幾ばくかの沈黙の後、エリスの籠った声がこう告げる。「そうだよ……もう僕ら、友達なんかじゃない……親友なんかじゃ、ないよ……とてもそうは思えない……」
これを受け、己の過ち全てを悟ったニコラは、絶望に浸りながら、「分かった……じゃあこれで俺たち、お終いだな」と”言おうとした”のだがその前に! 相手のセリフの続きがそれを遮るのだった――。
「だってそうでしょ? 僕ってば、君に好きって思ってもらえてることを、『嬉しい』って思っちゃってるんだ……それに君の”おチンチン”、『逞しくて、エッチだな~』とか、思っちゃってるんだっ……それって『僕も君に恋してる』ってことだよね? じゃあもう僕たち、『普通の親友じゃいられない』じゃんか……『恋するしか、ない』じゃんか……」
真っ赤に紅潮した顔を上げ、明後日の方向を見ながらそう呟く彼を見たニコラが、戸惑いをあらわにする。「へ? 何で、そんな……へっ!!? マジで、いいの? お前、ダニエルと付き合ってんじゃ……」
エリス(三角座りで溜息を吐いてから)「僕って、最低だよね……ダニエルのことが好きで、『彼を選ぶ』って決めたはずなのに……ソフィーとかキアラとか、そして君とか……大好きな人たちから好きって言ってもらえる度、どうしようもなく心が揺らぐんだ……。ダニエルは優しいからね、『複数対等愛(ポリアモリー)でもいいよ』って言ってくれたんだけど……やっぱりそれは、本心とは違ってるだろうし……とにかく僕は、最低だ」
ニコラ(期待と不安の両方を感じながら)「ポリ、アモリー……? そんな話出てたのか……。それってやっぱ、『ソフィーが暴走したから』……?」
エリス「ううん、違うよ……最初にそれを提案してくれたのは、キアラなんだ……でも……ううん、やっぱ違わないかな――ダニエルが妥協してくれた最大の理由は、極論すれば、ソフィーがいたからだと思う……って、結局そのソフィーからは、僕、『先週フラれちゃった』んだけど……」
ニコラ「先週、お前らの間に何があったのかは聞かないけどさ……正直俺はもう、蚊帳の外にいるのはごめんだわ……俺も、『お前らの仲間』に加わってもいいかな……? 『お前の恋人候補』になっても、いいかな……?」
エリス(何やら、逡巡しながら)「……」
ニコラ「とりあえず、今度ダニエルと話つけてみるわ。まぁたぶん、『無理』って言われるんだろうけど……俺の場合……」
すると突如、何らかの結論に至ったように立ち上がるエリス。「うん。もちろんダニエルが『いい』って言うなら、僕はいいよっ。でもその前にっ――」シュルッ――。前触れもなく、上に着ていたカーディガンを脱ぎ捨てる彼! 呆気にとられるニコラを余所に、どこまでも真剣な顔でエリスが、前代未聞のとんでもない発言をする。
「今日僕はここで、『君と浮気』するっ」
その、あまりに突拍子もない発言に、当のニコラは喜びを覚えるどころか、猛烈に耳を疑ってしまうのだった。
「はっ? はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」
そしてついに、最初で最後のエリスの大浮気が、始まるのだった……。
第五十七章 – 高校生活 Ep.44:Heavenly: 4-friends 4ever!!~四天友よ永遠なれ!!~ Part2→X これはポリアモリーですか? いえ、ただの乱交パーティーです
エリスの高校休日㊲ Hearty: Friends Forever!!~心友よ永遠なれ!!~ Part2
「う、浮気って……マジで言ってんのかエリー!!? そんなんしたらダニエル、めちゃくちゃ怒るんじゃ……」
今しがた親友の口から飛び出してきた、信じられないような”不誠実ワード”のことが、未だ完全には咀嚼できずにいるニコラ……。心の大部分が恐怖と当惑で占められてはいても、そこに残った僅かな期待が、徐々に大きく膨らみ始めているのも、また事実だった。いったいエリーは何を考えてるんだ!? そんなリスク負ってまで俺を優先するメリットないだろ!? ホントは俺に恋愛感情なんか、ない癖して――。彼の思慮を余所に、親友が確固とした態度でこう返してくる。
「うん。だからあとで、”死ぬほど”謝るつもり。ダニエルが許してくれるまで、何度も何度も謝るつもり……それでも彼が許してくれなくて、最後にはフラれちゃうことになったとしても、それは僕の自業自得だから、そのときは甘んじて受け入れるよ」まるで百戦錬磨の恋愛の達人かのように、そう言い澄ます親友……その姿がどこか大人びて見えて、ニコラは言いようのない恐怖と不安を覚えてしまうのだ。
ニコラ「バッカ! アイツは『ポリアモリーでもいい』って言ってくれてるんだろ!? ならまずは”聞いてみる”べきだろ!? そのままでも望み薄なのに、浮気なんかしてからじゃ、いよいよもって俺は……」
エリス「ううん。ダニエルの答えは、きっと変わらないと思う……イエスって言うか、ノーって言うかは分からないけど、聞くタイミングは関係ないって、何となくそう思うんだ……それなら僕は、『君を優先してあげたい』……たぶん、一番辛い思いさせちゃってるから……」
ニコラ「『そう思う』って、それって『お前の感想』だよな!? それに答えが『ノー』だって思うから、”浮気”なんて突飛なこと言い出したんじゃねぇの!? マジで意味が分かんねぇよ。何で俺なんかのために、そんな危険犯そうとしてくれてんのか……」だが彼が何より理解できなかったのが、この期に及んでなぜか相手を”論破”しようとしている、自分自身のことだった。
エリス(ブラウスのボタンを外しながら)「それは買い被りすぎだよ。何も僕は、君だけのために『浮気しよ』って言ってるわけじゃないんだ……ただ自分が、『君とエッチなことしたい』って思っちゃってるだけなんだ……最低だよね……ホント、最低だ……」全てのボタンを外し終え、ブラウスもカーディガン同様脱ぎ捨てる彼。下着姿で震えながら、続いて下のショート・パンツに手を掛けていく……。マズイことになると分かってはいても、身体が言うことを聞いてくれなかった。初めこそ、正しいと直感して始めた行為ではあるが、今では何が正解なのかが分からず、ただただ葛藤と自己嫌悪で吐きそうだった。
ニコラ「や、やめろエリー……こんなんお前らしくないじゃん……頼むからそこで止まってくれ……じゃないと俺、これ以上は、もう――」
エリス(パンツを脱ぐ直前で固まって)「じゃあさ……ニコは納得できるの……? もしダニエルから『ノー』って言われたら、それで『僕のこと諦められる』の? そしてそのとき『僕たちは、前と同じ親友のままでいられる』のっ?」
ニコラ「そ、それは……」
エリス(今にも爆発しそうなほど震えながら)「僕はね……無理そうだよ……君の恋心を知っちゃったからには、もう前のように無邪気ではいられない……無神経ではいられない……。何より僕自身が、『君に恋せずにはいられない』……だって、嬉しいに決まってる……大好きな人から『好き』って言ってもらえて……嬉しいに、決まってる……」彼の目に涙が滲んでいき、やがてひと筋の流星となって零れ落ちる。
ニコラ(親友を抱きしめたい衝動をグッと堪えて)「そりゃ、そんときは簡単に諦めがつくとは思えない……ってか、一生引きずるんだとは思う……けどもし、『イエス』って言ってもらえる確率が1%でもあるのなら、俺はそっちに賭けるべきだと思う……。だからもう、”らしくないこと”はやめようぜ? なっ?」
そう強がってみたはいいが、その実彼の方も今では、激しい葛藤に晒されていた。実際問題、長らく明確に”ライバル”だった自分が、ダニエルから受け入れられる確率は1%にも満たないのかもしれない……それならいっそのこと、今日ここで”親友のご厚意”に甘えて、『思いを遂げる』のも択としては”アリ”なのかもしれない……どうする……どうするっ――。
彼の内なる葛藤を余所に、ついにエリスが泣き崩れる。「僕だってダニエルのことは裏切りたくないっ!! でもそれと同じくらい、君を失うのは嫌だっ。たとえ『ノー』って言われる確率が0.1%でもあるのなら、僕はその前に君を『恋人』にして、あとでダニエルに何千回・何万回でも謝る方を選ぶっ!! 『君のことが好き』だからぁっ!!」
「くっ、エリーッ――」思わず相手のことを抱きしめて、胸いっぱいの愛を噛みしめずにはいられないニコラ。あぁ、もうコイツってばっ! 何でそんな可愛いこと言ってくれんだよ……こっちが必死こいて我慢しようとしてんのに……そんなんされたら引き下がれねぇじゃんっ――。「俺もお前が好きだっ!! 大好きだエリーィッ!!」
彼の胸に抱かれながら、なおも悲しみに咽び泣くエリス。「君じゃなかったら……君じゃなかったら僕だってこんなことしないっ……でも君だから……君だから辛いんだっ……君との関係は、別次元で大切すぎるからっ……」幼子のように、何度も何度もしゃくり上げて泣く恋人のことが、これまでで一番愛おしく思えるニコラ……そして心の葛藤は最終局面を迎えるっ――。
ニコラの心に住まう悪魔『奪えっ、奪っちまえぇぇぇぇぇぇぇ!!! 欲しいものは力づくで手に入れろぉぉぉぉぉぉっ!!! 敗北はテメェの人生に一生ついて回るぞぉぉぉぉぉぉぉっ!!! 負け犬のままでいいのかニコラァァァァァァッ!!! さもなくば言ってみろっ! 『コイツは俺のもの』だって、言ってみろぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!』
プチンッ――。ニコラの我慢の糸が切れる。恋人の”うなじ”に鼻を埋めて、そこに満ちている甘い香りを肺いっぱいに吸い込んでは、その耳元でこう囁く彼。「なぁエリー、最後に一つだけ教えてくれ……。『俺のこと好き』っていうのは、本当か……? 本当に恋愛感情としての『好き』か……? 『俺への同情』とか、単なる『性欲から出た嘘』とかじゃなくて……?」
一瞬意表を突かれるエリスだったが、すぐまた切なそうな顔になって、混じりっけなしの本心を告げるのだった。「当たり前だよっ!! 僕っ、そんなことで嘘なんかつかないっ!! これまでいろんな経験をして、たくさん失敗したこともあったけど、だからこそこれだけはハッキリと言えるっ!! 『僕は君が好きだニコ』ッ!! 『失いたくない』って思ってるっ!! 『恋してる』っ!!」溢れてくる……愛と、愛ゆえの不満が……。「ふっ……どうしてみんな信じてくれないの……? ソフィーにしてもキアラにしても、君にしても……僕ってそんなに『嘘つき』に見えるのっ……?」
ニコラ(恋人の背中をゆっくり摩って)「ごめん……でもっ、今のが最後。もう信じるよ……あぁ……マジで嬉しいわ……両想いとか、最高だ――」そこで恋人と真正面から向かい合った彼は、正真正銘”最初で最後”となる『ガチ告白』に、乗り出すのだった……。
「俺もお前が好きだ、エリー……もしよかったら、『キス』、しないか……?」
そう言って優しく微笑む彼を前に、エリスは幸せそうに「うんっ……」と答えて、ゆっくりと目を閉じるのだった。
チャクッ……チャクッ……チュックッ……。痺れるような濃厚な接吻が交わされていく。お互いずっと傍にいて、誰より相手を知っていたにもかかわらず、その『味』と鼻から抜ける『匂い』だけは、全くの新感覚だった……。脳がなす術なくトロける……快感が、無尽蔵に溢れてくる……口と舌全体が性感帯になったかのように、その刺激はあまりにも強烈なものだった。
エリスの心の声『き、気持ちいい……キスがこんなに気持ちいなんて……昔テムバやキアラ、ダニエルとしたキスもすごかったけど、今回のが一番かも……。ニコってこんなキス、上手なんだ……こんな味が、するんだ……っ!!? だ、ダメッ! なんか来ちゃうっ……来ちゃ――』
「うっ、んんっっ――」チュッ。快感がピークに達したところで、二人の唇が離れる。すぐさま喘ぎながら見つめ合う二人だったが、片やエリスが恍惚とした表情を浮かべているのに対し、片やニコラは幸せそうな――それでいてどこか辛そうな――表情を浮かべているのだ。その理由は、じき明らかとなる――。
「あ――はぁ――ありがとな、エリー……。今日はとりあえず、”ここまで”にしておこう――はぁ、はぁ――お前の気持ちと、今のキスだけで――はぁ――俺は充分だから」そう言って立ち上がり、”その先”には進まないことを選んだニコラ。性欲的には完全な生殺し状態ではあるが、『愛』の面では十二分に満たされたことで、何とか踏みとどまることができたのだ。
一方、その決断に驚かされるエリス。「えっ……」と怯えた顔をして、ついこんな的外れなことを聞いてしまう。「ど、どうして……? もしかして僕、何か”いけなかった”?」
するとニコラが、照れくさそうに目を逸らしながら、口元を腕で隠してこう返す。「いや、キスはっ、マジでっ、最高だった……。ただ、何て言うか……やっぱこれ以上は『お前の彼氏に悪い』と思って……お前、『ダニエルのことも俺と同じくらい好き』、なんだろ……?」
相手の意図を汲み取って、ひとまず安心するエリス。「う、うん……好きだよ、ダニエルのこと……たぶん、『一番好き』……」と言って頬を染め、自身の唇を指でなぞるのだ。
ニコラ(恋人の頭にポンと手を置いて)「ならやめとこうぜ。なぁに心配するな。俺も『正式な彼氏』になった暁には、嫌ってほどセックスして、ゼッテー『お前を満足させてやっから』さっ? それまで『本番はお預け』ってことでっ……どうだ?」彼が軽い調子でそう告げるも、まだエリスは納得してなそうだ――。「で、でも……」と案ずるような目で、彼の顔を見上げている。
対して相手の髪をクシャクシャにし、めげずに説得を続けるニコラ。「それにもし『無理』だったとしても、案ずるなかれっ――俺たちはいつまでも『心友』のままだっ! 心と心で繋がった、最高の親友のままっ! それだけは、何があっても変わらない。約束するっ――」チュッ♡ 出し抜けに、相手の額に口づけして、このつかの間の不貞行為を締めくくる彼……これには心配性のエリスも、温かな気持ちになって「うんっ……」と答えるのだった。
「それじゃ、俺たちの『浮気』はこれにて終了だ」
そう囁いてから心友を立たせてやり、ふと床に落ちているブラウスを拾い上げては、それを相手の肩に羽織らせるニコラ。そうして彼は、まるでエリスの使用人かのように、その袖に腕を通してやってから、ボタンを留めていくのだ。「それより、お前の方は”平気”か? 俺は、まぁ……『さっき独りでした』から、大丈夫だけど……たぶんエリー、『かなり苦しい状況』だろ……? 何なら、『お前も独りでする』か……? 俺、『しばらく部屋から出てる』からさ……」
その質問に対して、バツが悪そうに苦笑して、そっぽ向くエリス。「そ、それが、そうでもなくって……。実はさっきキスしたとき……その……(ゴニョゴニョ)」彼がそこで口ごもると、しゃがんだ状態で相手のシャツのボタンを留めていたニコラが、全てを悟って息を飲む。「ウソ? マジで……『あれでイッた』の!!?」
エリス(心底きまりが悪そうに)「い、イッたって言うか、その……軽く、チョロッと、『出ちゃった』って言うか……」
ニコラ(謎の興奮状態に陥りながら)「それが『イった』ってことでしょう!!? ちょっと見せてみんしゃいっ――」思わず相手のパンツに興味を移して、服を着せることから脱がすことにシフトする使用人。その姿はさながら、『お漏らししたお坊ちゃまを叱りつけるお節介な中年マダム』だった。
「ちょ、ニコッ、やめっ――」対してエリスは、必死にパンツの金具のところを押さえては、恥ずかしい場所を見られまいと抵抗する。こちらも先ほどまでは脱ごうとしていたので、立場が逆転している。「何考えてるの!? 『今日はもうしない』って言ったじゃないかっ!!?」
ニコラ(執拗に敵軍の守りを攻め崩しながら)「えぇそうですともっ! だから何も、私は『性的な意図』があってこんなことしてるわけではありませんっ!? ただあなたの専属『家政夫』としては、”汚れ物”を見過ごすことはできませんからねぇ~? さぁ大人しく観念して、下の状態をお見せくださいっ――」ズルッ。あえなく撃沈するエリス軍守備兵隊。牙城の門が開け放たれ、大将のいる本陣があらわとなる――そこにあったのは何と、鮮血に染まった惨たらしいありさまの陣幕(戦用テント)だった!(※ただのシミのついた白色のドロワーズです)
「ふっ……くっ……」恥ずかしさから顔を背けるエリスを余所に、ニコラが呆れたように首を振りながら、腕を伸ばして近くにあったティッシュを数枚手に取る。「あ~あぁっ、こんな”ヌラヌラ”に汚しやがってぇ……」そう言ってシミのところにティッシュを当てていくと、粘液の一部がそちらに染み込んでいくも、なおもシミは消えることなく残り続けている。
仕方なくドロワーズ自体も下し、その内側の状態もチェックする家政夫さん。割と見慣れた『ちっこいペニス』と、割と見慣れない『透明のザーメン』が”こんにちは”している。ニコラはまずそのザーメンをティッシュで丁寧に拭っていき、続いてペニスの方も、先端に残った精液を中心に拭っていく。好きな人の性器を間近に見て、手玉に取りながらも彼は、不思議と冷静さを保てていた。
ニコラの心の声『エリーのチンポ……相変わらず”可愛い”な……身体は大分”色っぽく”成長してるのに、ここだけは昔のまんまだわ……。けどまぁ、ちゃんと勃起して”射精|(っぽいこと)”もできるみたいだし……大丈夫か……。こん次は、俺の手でイかせてやるからな……? 『俺のチンポ』で、イかせてやるからな――』フキフキ。
「もうじき終わりますから、我慢してくださいねー」虫歯治療を受ける患者を励ます歯科助手みたいな口ぶりでそう言ってから、何食わぬ顔で作業を続けるニコラ。ペニスを軽く扱いてから皮を剥き、尿道に残っていた最後の精液も拭き取っていく……。だがそんな上辺だけのマニュアル対応をされたのでは、苦痛と恐怖に立ち向かう患者も堪ったものではない――突如襲いくる”激しい痛み”が、エリスの身体を強張らせるのだ――ムク、ムク、ムクッ……。
「あ、あのぅ……エリー様? 困りますよ、『おチンチンおっきく』されたら……」手の中でギンギンに硬直し、ピョコンと反り立ってしまった恋人の性器を見て、ニコラが呆れ調子で言う。当のエリスは両手で顔を隠して、「ご、ごめんなさい……」と謝ることしかできない。その所作と震えた声からは、単なる恥じらいよりも自責の念がうかがえる……そう、彼はニコラに謝ると同時に、心のなかでダニエルに謝っていたのである。そのことに気づいたからこそニコラは、これ以上の”悪ノリ”はよそうと思えたのである――無言で衣服を元に戻してやり、「ちょっと手、洗ってくるわ」と立ち上がったニコラは、去り際、恋人の肩を抱いてこう告げるのである。
「すぐ、『謝らずに済むようにしてやる』からな……」
そうして部屋を出ていくニコラ。独り残されたエリスは、最上の喜びと罪悪感に浸りながら、静かに嗚咽を繰り返すのだった。
ありがとう、ニコ……そしてごめん、ダニエル……。
*
ガチャッ――。2分後、戻ってきたニコラの様子は、いつもと変りなく『陽キャ』のままだった。「うぇーい! ジュース持ってきたぞー! ゲームでもして遊ぼーぜエリー!!」
対するエリスも、すっかり吹っ切れたような顔でそれを出迎える。「おーっ! 久しぶりだからとことん遊ぶぞぉー!!」
ニコ(グラスを机に置きながら)「とりあえず、『ヒューマン フォール フラット4』でもするかー?」
エリ「やるー!!」
ニコ「ほいっ、これエリーのコントローラーッ」
エリ「ありがとーっ」
ニコ「そいじゃPCを点けてっとー」
エリ(机のグラスを取りながら)「ジュース貰うねー?」
ニコ「ほーいっ……っと、点いたついた。したらばゲームを起動して……よっしゃ、準備完了!」
エリ(床にクッションを敷き詰めて)「はいっニコの特等席用意しといたよっ!」
ニコ(ありがたくそこに座って)「サンキューッ! そいじゃま、始めますかっ!」
「うんっ――」ポムッ! 何を思ってか、ニコラのすぐ傍に密着した状態で座るエリス。これには戸惑いを感じずにはいられないニコラ。「あ、あのぅエリーさん? ちと近すぎやしませんかねぇ?」
エリ(あっけらかんとして)「えーそぉ? これくらい『友達ならフツー』だと思うけどぉ?」これ見よがしに、ニコラの方へ肩を寄せる彼。
ニコ(数秒考えた後、まんまと洗脳されて)「それもそーか~? なら『もっとフツー』って感じにするのもアリじゃね? こういうのとかっ――」そう言ってエリスの身体を跨ぎ、両脚で挟み込むようにして座る彼。両腕をバックハグするかのごとく回り込ませ、相手の腹の前でコントローラーを構えてから、相手の頭を避けるように身体を斜めに倒すと、それは本当に”フツー”なのではないかと思えるほどしっくりくる体勢だった。心友の髪の匂いが心地よいアロマとなって鼻腔をくすぐる……。
エリ(努めてあっけらかんとして)「うんっ! 大分フツーになった! じゃあゲーム始めよっか?」
ニコ(上に同じく)「おっしゃ! コンティニューするぜぃ!」
そうして二人はこの日、内心ドキドキしながら(終始ペニスを半勃ちさせたまま)、日が暮れるまで楽しくゲームしましたとさ。そしてこれがエリスにとっての、最初で最後の『大浮気』の模様でしたとさ。めでたし、めでたし――と言うか、くわばらくわばら。
えっ? 『大浮気と言うからには、もっとすごいことを期待したのに』ですって? それは申し訳ありません……ですが心配ご無用! 次からのエピソードは、待ちに待った『大本番』ですから!
エリスの高校生活㊱ これはポリアモリーですか? いえ、ただの乱交パーティーです Part1
2042年4月28日。週明けの月曜となるこの日、早速ニコラはエリスを連れて、宿敵ダニエルのもとへ”話し合い”にいく算段を立てていた。だがあいにくと、ダニエルは学校をやめてしまっているので、決戦の時は放課後へと持ち越されることとなる。『それならば』とニコラは、手始めに『もう一人のライバル』である『キアラ』の方を当ってみることにし、休み時間中の彼女を捕まえては、正々堂々と先週の出来事について明かし始めるのだった。
「と言うわけで、俺もアイツのこと好きだからさ。お前らと『ポリアモリー契約』結んでもいいかな?」お終いにそう言って許可を求めるニコラだったが、キアラは終始キョトンとしていて、最終的にはこんな曖昧な返答をしてくるのだ。「あいや、アタイに聞かれても困るんだわさ……アタイだって『あの彼氏さんから、直接許可貰ってるわけじゃない』もんで……。ただお嬢いわく、確かに彼氏さんの方も、『ポリアモリーにやぶさかではない』と言ってるらしいけど……」
「なら今日の放課後さ、一緒に話つけにいかない? お前もこのままじゃ気持ちワリーだろ?」彼が良かれと思ってそう提案するも、キアラは心底”やぶさか”そうに、「えぇぇ……」と顔を青ざめさせるのだ。だが結局のところ、それからのニコラの説得もあって、彼女も放課後の決戦に付いてくることになった。
*
ってなわけで放課後。ニコラはエリス、キアラの二人を引き連れて、初めて宿敵ダニエルの家を訪れていた。インターフォンを押し、出てきたダニエルと軽く話をして、家に上げてもらう三人。家には彼の他に彼のお祖母ちゃんもいたので、三人はとりあえず彼の部屋に入ることとなり、彼が飲み物を持ってくるまでの数分間、とてつもなく気まずい思いをすることとなった(できることと言えば、適当に部屋の中を見回すことくらい……それなのに”ある”ものと言えば、筋トレ器具と教材と画材、それと彼の書いた漫画イラストくらい……)。
だからこそニコラは、ダニエルが「おまたせ~」と戻ってきたところで、すかさず本題に入るのだ。彼が『かくかくしかじかなんだけ、俺もポリアモーレ?』と、キアラに言ったことと丸っきり同じことを話していくと(そんなこと言ってないだろ……)、ダニエルは真摯に耳を傾けながら、時折頷きを交えつつ、最後には清々しいほど爽やかに、こう二つ返事するのだった。
「うんっ、ダメッ☆」
唖然とするニコラ(と後ろのエリス)。すぐさま「な、何で? 俺だってお前に負けねぇくらいエリーのこと大切に思ってるんだけど?」と反論する彼だったが、どうやら問題はそういうことではないようだ――ダニエルが自身の考えを述べ始める。
ダニ「あっ、勘違いしないでね? 『キアラはいい』よ。僕が特例としてポリアモリーを認めたのは、『キアラとソフィー』に対してだから」
キア「えっ、アタイはいいの……? ど、どうも(マジかよやりぃぃぃぃぃっ!! ってきり嫌われてるかと思ってたのに、太っ腹だなダニエル兄やんっ!!)」
ニコ「その二人がよくて、何で俺はダメなん? マジ、納得いかねぇんだけど?」
ダニ「だって、『君は男』でしょ? ってことは『セックスのとき、エリスのお尻にチンポ挿れる』ってことだよねぇ?」
ニコ「ま、まぁ、そうなるわな……?」
エリ(心で泣きながら)『ぼ、僕……帰ってもいいですか……?』
ダニ(爽やか笑顔で)「ならやっぱりダメだよ☆ だって――」
「『エリスのお尻は、僕のもの』だから(キラーン)」
ブチッ――。
ニコ(完全にブチ切れながら)「はっ? 『エリーのケツは俺のもん』だろ? 何言ってんのお前?」
ダニ(同じく殺気を漂わせて)「童貞のくせに生意気だね、君? そうやって一生、妄想してれば? まぁ君が何と言おうと、『エリスのおまんこは僕のもの』だけどねっ?」
エリ(ますます心で泣きながら)『うぅ……僕のお尻は、僕のものなんだけど……』
キア(いそいそと退散しながら)「そ、そいじゃあアタイはこれで。さいなら~」
ニコ&ダニ「いいからそこにいろっ!(いてっ!)」
キア(降参したように)「は、はいぃ……」
ニコ(改め直して)「分かった。千歩譲って『今はお前のもの』だとする。けどそれって、結局は『エリーが許してくれた』からだよな? ってことは『最終決定権は、やっぱエリーにある』んじゃね? 違うか?」
ダニ(ぐうの音も出ず)「そ、それはっ、そうだけど……」
ニコ「じゃあエリーに決めてもらおうぜ? 『どっちにケツを差し出すか』って。それで文句ないだろ?」
ダニ(不服そうに)「か、勝手にすればっ(まぁどの道そうなるよね……)」
ニコ「それでエリー。どっちを選ぶ? 俺か? 『このヘンタイ野郎』か?」
エリ(心底憤慨しながら)「もうっ! そういうことじゃないでしょー!!? 『みんなで仲良くポリアモリーできないかな?』って話じゃなかったのっ!!? 『どっちか?』なんて聞かれたら、そりゃ僕は『ダニエルを選ぶ』よっ!!」
ニコ(当てが外れすぎて)「えぇぇ……」
ダニ(感動しつつ、心中でほくそ笑んで)「え、エリス……(ざまぁ見ろニコラッ!!)」
キア(全力で笑いを堪えて)「っ……ふっ……」
エリ(ダニエルの前に出て)「けどね、ダニエル? 僕、ニコラのことも好きなんだ……だからキアラやソフィーみたいに、彼もポリアモリーのパートナーとして認めてくれると、すごく嬉しい……。ごめんね? 自分勝手なお願いだってことは、重々承知してるんだけど……僕は懸けてみたいんだ。『みんなで幸せになれる未来』に!」
しばしの沈黙の後、ダニエルが答える。
「これで、最後だからね……」
エリスが「えっ……?」と返すと、ダニエルが苦虫を噛み潰したような顔でこう続ける。
「これで最後だからねっ? 『ポリアモリーの定員』は! そりゃ僕だって、一人で君を独占し続けられるとは思ってなかったけどさっ? そんな”前衛的な価値観”持ち出されちゃったら、不安になるのも当然でしょっ!? 『君のこと好きな人はいっぱいいる』んだからさっ!! 『いつか捨てられるんじゃないか』って、不安に思うのも当然でしょっ!!? だから『ニコラが最後』!! そう約束してくれるんだったら、今回だけ特別に、僕は彼のことを認めるよ!」
強い難色を示しつつも、そう言って譲歩してくれたダニエル……エリスは思わず彼に抱きついて、こう誓いの言葉を述べるのだった。「ありがとう、ダニエルッ……もちろん、約束するよ……『ニコラで最後』。もうこれ以上、誰ともお付き合いしないよ……。そしてこれも約束する……『僕は決して君を手放さない、捨てたりしない』……だって『君のこと、一番大好きだから』っ……ホントにありがとう、ダニエル……」
ニコラとキアラの二人は、この感動的なシーンに立ち会いながらも、どこか複雑な気持ちだった。なぜって、エリスが『彼のことを一番好き』と言った瞬間、当のダニエルがニマァ~っとドヤ顔を浮かべてきたからだ。これにはさすがのキアラでさえ、『今に見てなよ……』と内なる闘志を燃やすのだった。
そうしてハグを終え、すっかり気分が晴れたような様子のエリスが、三人を集めてこんなことを言う。「それじゃ、みんな手を繋いで! 仲直りと、『これからよろしくね』って気持ちを籠めた、握手をしよう!」されるがまま、渋々手を取り合う三人。「嬉しいな……これでみんな、『対等なパートナー』になったんだ……すごく、幸せ……」思わず感極まり、目に涙を滲ませるエリスだったが、ここで予想外の出来事が起こる――何とダニエルが手を振り払って、駄々を捏ね始めたのだ!
「やっぱりダメェ~ッ!! 君たちにエリスは渡せな~いっ!!」
一同「えぇぇぇぇぇぇぇ~!!?」
ダニ「だって君たち何にも分かってないもん!! 『エリスの特別さ』を、何にも!!」
キア「どどどどういうことだい!? アタイまで巻き添えで却下されたんかい!!?」
ニコ「何が分かってないって!!? わけ分かんねぇ理由で前言を撤回すなよ!!」
エリ「だ、ダニエル……? どうして……?」
ダニ「じゃあ聞くけどさ!? 『君たちはエリスのどこが好き』なの!? まさか『ただ可愛いから』とか『優しくしてくれたから』とか、そんな程度の理由じゃないよねっ!!?」
ニコ「当たりめぇだろ!! 俺ら何年の付き合いだと思ってんだ!! 『特別な絆がある』からに決まってらぁな!!」
キア「あ、アタイだって!! 特別な絆が……あるっちゃ……あるし……(ボソボソ)」
ダニ「本当に!!? それって『自分の命とか人生とか、全部彼に捧げられるほど』の絆!!?」
ニコ「おうよっ!!」
キア「も、もちろんっ……そのつもりだわさっ!!(ヤケクソ)」
しばし彼らの目を見つめ、その本心を見定めるダニエル。
エリ「み、みんなやめよっ? 僕別に、君たちに『何か捧げてほしい』だなんて、思ってないよっ? ねっ?」
ダニ(溜息を吐いてから)「ひとまず君らの言葉を信じるけどさ……対等なパートナーになるって言うんだったら、最後に一つだけ条件があるっ――」そこでエリスの身体を引き寄せた彼が、高らかにこう宣言する。
「君たちには今から、『リアル男の娘研修』を受けてもらうっ!!」
一同「ふぇぇぇぇぇぇぇぇ~!!?」
→一階にいるダニ祖母「うるさいよ、あんたらっ~!!」
→ダニ(部屋のドアを開けて祖母に向かって)「お祖母ちゃん! 僕ら今から、『一階でゲームする』からさ! ちょっと買い物にでも行っててくれな~い?(厄介払い)」
→ダニ祖母「そんなこと言って~!! まぁた恋人と『イチャコラ』するつもりだろ~!!? ウェンディ(ダニ母)に言いつけるよぉ~!!」
→ダニ「うんそうだよぉ~!! イチャコラするから早く出てって~!!(ヤケクソPart2)」
→ダニ祖母「勝手にしなぁ~!!(ガチャンと外出する彼女)」
一同『えぇぇ……(ドン引き)』
気を取り直してダニエル。「さてとっ。これから君たちに受けてもらう研修は――」
ニコ「――ちょちょい待ちっ!! 『イチャコラ』って、まじでこれから『すんの』か!!? お前ん家で!!? お前らに見られながらっ!!?」
ダニ「うんっ☆ だって僕ヤダもんっ! 『僕の知らないところで君たちが初体験する』なんて。それに今さら恥ずかしがることでもないでしょ? 『特別な絆』があるくらい好き合ってる同士なんだからさ? どうせもう充分『イチャついてきた』んでしょ君たち? 僕の知らないところで」
図星すぎて返す言葉もない一同……苦笑してそっぽ向くことしかできない。
ダニ「だったらここで済ましちゃおうよ『初体験』! ねっ? エリスもいいでしょっ!?」
エリ「ぼぼぼ僕はその、そそそういうのは二人きりでするものかなって、おお思うよっ!?」
ニコ(ゴクリと唾を飲んでから)「いやっ、いいよ。どうせ俺も近々、そうするつもりだったし――」ずっと抱えていた鞄を下ろして、上の服を脱ぎ始める彼。
キア(同じく覚悟を決めたように)「あ、アタイだって! やってやろうじゃんっ――」脱ぎぬぎ。
エリ「ちょっ、二人ともぉっ!! こんなのヘンだよっ!! 考え直そうよっ!!」
ニコ(脱ぎぬぎしながら)「すまんエリー。けどこれが『お前と付き合うための試練』なんだって言うなら、俺は喜んで受けるぜ。安心しろ、気持ちよくしてやっから」
キア(ドレスを頭から脱いで、下着姿になってから)「お嬢、アタイさ。いつ”こうなってもいい”ように、学校では常に『勝負下着』身に着けてたんよ。だから今日、女としてのプライドを全て懸けて、あんたをメロメロにしてみせるっ――」ドレスを床に脱ぎ捨てる彼女。その胸と腰を包んでいるのは、優美なシースルー・フリルが特徴的な、女神のように洗練された深紅のランジェリーだ。
「そ、そんなことしなくたって、充分メロメロだよぉ……」顔を背けつつも、チラチラと彼女の胸元を瞥見するエリス。やはり女性の身体にも惹かれる部分はあるようだ。
追ってニコラも下着姿になったところで、ダニエルが開会宣言を行う。
「それじゃあ始めるよっ!! 『リアル男の娘研修』!!」
エリスの高校生活㊲ Heavenly: 4-friends 4ever!!~四天友よ永遠なれ!!~ これはポリアモリーですか? だからただの乱交パーティーですってば! PartX
ダニ「まず君たちには、『男の娘』とは何たるかを知ってもらう!!」
ニコ「オトコノコ? 何じゃそりゃ?」
ダニ「日本の言葉で、『女の子よりも可憐な男の子』を表現する言葉なんだ!」
キア「つまりは、アタイの言う『お嬢』と同じってこったいね?」
ダニ「まぁそうだね。とりあえずそう認識してくれて構わない」
エリ『うぅ……もう帰りたい……』
ニコ「それがエリーと何の関係があるの?」
ダニ「フフフッ、それはね? 『男の娘は普通ファンタジーの世界にしかいない』ってことなんだよ!!」
ニコ&キア『っ!!?』
ダニ「そう。現実では男の娘というのは、極めて稀な存在なんだ。例えばこれを見てっ――」彼が壁に飾ってある絵の一つを示す。そこにはミルクたっぷりミルクティー色の髪をした、メイド姿の可憐なキャラクターの絵が描かれている。「彼の名前は『望月ゆたか』ちゃん! 『路地裏スーベニール』って漫画に登場するオットリ系清純派オトコの娘なんだ!」ダダーンッ!!
ニコ(彼なりに衝撃を受けて)「こ、これが……オトコ……!!?」
ダニ「これで分かったでしょ? 男の娘っていうのは、本来ファンタジーの世界にのみ存在を許された神聖で稀有な存在なんだ。そりゃそうだよね? ファンタジーは所詮ファンタジーで、これだって『単なる絵』なんだから。『どうとでも言える』んだもん……」
一同「……」
ダニ「だから僕たちが今”目の当たりにしてる”のは、ホント、掛け値なしに『奇跡』なんだ!! そこんところちゃんと、肝に銘じておいてほしい!!」
ニコ&キア(とりあえず頷いて)『まぁ言われなくても、そのくらい分かってるけど……』
ダニ「そしてこれも分かっててほしい! 僕たち『同志』が長年夢見てきた『この数十年の歴史の重み』と、そのきっかけとなった『原点』について!」
ご、ゴクリ……。無駄に仰々しい語りに、つい当てられる二人。はたしてその原点とは――。
ダニ(例によって、一枚の絵を見せて)「これが『男の娘』文化の先駆けにして原点!! 『ストップ!! ひばりくん!』の『大空 ひばり』くんだよっ!!」ダダダダーンッ!!!
ニコ(驚愕しながら)「こ、これが……『エリーの原点』!!?」
→エリ「違うよっ!!? 僕の原点はお父さんとお母さんだよっ!!?」
キア(同上)「知らんかった……お嬢ってアタイらのために、『絵のなかから飛び出してきてくれた妖精』だったのか……」
→エリ「そんなわけないでしょっ!!? 僕はお母さんのお腹から飛び出してきたのっ!!」
ダニ「と、ここまで理解してくれれば、もう僕から言うことは何もない……早速、尊敬と感謝の念を持って、『本番』に臨みましょう……」魂が解放されたかのように両手を合わせ、不気味な穏やかさでそう告げる彼。まるで『男の娘教』の教祖にでもなったかのようだ。
ニコ&キア(うやうやしく手を合わせ)「はいぃ……」
→エリ「ねぇ何これっ!!? 僕帰るよっ!!? もう帰るよっ!!? じゃあねっ――」
バサッ。堪らずエリスが退室しようとした瞬間、ダニエルが後ろから抱きついてきて、耳元でこう囁くのだ。「ごめん……おふざけはもうお終いにする……君たちの関係を認めるからさ……ここで君たちが『初エッチしてるとこ、見せて』……お願い……」
背中に押し付けられた彼の”アソコ”が、ギンギンに勃起しているのが伝わってくる……そのときエリスはようやく理解した。ダニエルの真の目的を――彼はこの不都合な状況を逆手に取って、『大掛かりなプレイ』に昇華しようとしているのだ! すでに恋人から『一番好き』のお墨付きと、『ニコラが最後のパートナー』という約束まで取り付けることに成功した彼は、そのうえ『彼らの初体験』にまで立ち会うことで、彼らを快楽の種として利用しつつ、あわよくばパートナー間での上下関係をハッキリさせようとしているのだ!!
(※そう言うとダニエルが悪人みたいに聞こえるが、別に彼はそこまで悪いことはしていない。そしてそのことを分かってるからこそ、エリスは次のように返すのだ――)
「も、もう……今回だけだからね……?」死ぬほどの恥ずかしさを押し殺して彼がそう言うと、ダニエルは「うんっ、ありがとう」と囁いて、彼の真っ赤になった左耳を齧るのだった。
ニコ「あ、あのぅ、お二人さん? 俺もう、いろんな意味で爆発しそうなんすけど……?」
キア「アタイらをダシに『羞恥プレイ』しようってんなら、あとで”はっ倒す”から覚悟しなよ?」
ダニ(そのままエリスごと振り向いて、彼のことを二人に突き出して)「いえ滅相もない! エリスも『いいよ』って言ってくれたから、いよいよ『実地研修』の始まりだよっ☆」
ニコ&キア『それでもやっぱ『研修』なんだ……いい加減『本番』をくれ……』
ダニ「はいっ! まず『前戯』から始めよう! 二人は『エリスの一番弱い部分』ってどこか分かる?(キラキラ)」
ニコ「そ、そりゃ、『チンポ』じゃねぇの? お、男だし……(一昨日キスしただけでイッてたくらいだしな)」
キア「いや待てよ? お嬢は『お嬢』、つまり『男の娘』であるからして……やっぱ『お尻』なのでは?(チッキショー、アタイ『掘れねぇ』んだけどなぁ……)」
エリ『ソフィー……僕をこの場から連れ出して……(涙)』
ダニ「ブブー! もうキアラってば~、そこまで辿り着いててどうして間違うのぉ? 正解は『乳首』だよ☆ 男の娘は、みんな乳首が敏感なのっ!(※必ずしもそうとは限りません)」
ニコ「あぁそうか、乳首か……(くっ、サマースクールのときを思い出しちまうっ)」
キア『先々週、そんなところをアタイは、無理やり舐めちゃってたんだな……』
エリ『ひ、否定できないのが悔しい……(涙)』
ダニ「それじゃあ二人とも、乳首を愛撫してあげて! 僕のベッド使ってもいいからっ!」
ニコ「そ、そうだなっ。じゃあエリー。ここに座ってくれ」
エリ(堪忍したように)「も、もう好きにして……(悟)」
ニコ「そんじゃ、触ってくけど、いいか? エリー……」
エリ(時計じかけのピンクモード)「モースキニシテ」
ニコ《さわさわ……》
エリ「んっ……はぅっ……」
ニコ「ど、どう? 気持ちいかエリー?」
エリ「うっふぅん……気持ちーよ、ニコ……」ドモ アリガト、ミスター・ロボット。
キア「ちょい! アタイにも触らせてよっ――」強引に左乳の席を奪取する彼女。それから服の上からでも分かるほど勃起したお豆を、カリカリと引っ掻いていく。「気持ちいかいお嬢? アタイの『ピッキング』、気持ちいかい?」
エリ(思わず口を押えて、胸を反らしながら)「キアラッ、ダメッ、それっ!」
ダニ『ろ、録画したい……けどさすがにそれはマズイから、脳内に保存しておこう』
ニコ「服脱がせるぞ。腕上げて――」エリスの着る七分袖のカットソーを持ち上げる彼。エリスもそれに応えたことで、ついに彼も下着姿となる。「ブラも、外すぞ?」間髪入れずそれも剥ごうとするニコラに対し、エリスがコクッと頷きを返す。もはや彼らを止めるものは、何もなかった――。
コリコリコリコリ。恋人二人から生乳首を転がされ始めたエリス。ずっと抑えようと努めてきた卑猥な声が、徐々に手の隙間から漏れ出してくる。「うあっ、くふぅっ、ふにゅっ……」
その合図を受けて、ダニエルがこう”解説”を交え始める。「二人とも見ててね? たぶんエリスそろそろ”イク”と思うから、そのときの彼の顔、ちゃんと見ててあげて」言われた二人が乳首から顔に視線を移すと、エリスがその気配を感じて、恥ずかしそうに両手で顔を隠すのだ。これには二人も俄然、熱意を持って乳首を捏ねくり回していく。そして――。
エリ「やっイッ、だ、ダメッ! イッちゃ、イッちゃ――」
「ひぐっ――」ビクンッ、ビクンッ、ビクンッ――。
いつの間にやらベッドに押し倒されるかたちで、仰向けになって身体を反らせてたエリスが、一目瞭然で達したと分かるほどの、激しい痙攣を繰り返す。つい愛撫をやめようとしてしまう二人だったが、ダニエルから「はいっ、そこでやめないっ! しっかり最後までイかせてあげてっ!!」というお達しがあったことで、その通りにすると、口から唾液を零しながら目元を隠しているエリスが、「も、いいよっ――イッてる! イッてるからっ!! ふぎゅっ――」と言って第二ウェーヴの絶頂を迎える。ビクッ、ビクッ、ビクンッ――。
それが済んだところで、ダニエルが「はぁ~い、お顔見せてあげて~♡」とエリスの両腕を取っ払うと、そこにはトロンとした表情で呆然と彼方を見つめている、とてつもなく煽情的かつ無防備な彼の顔があった。ダニエルが嬉しそうに続ける。「二人とも見える? これが『リアル男の娘のイキ顔』だよ」
エリストロン(男の娘型オートボット)「み、みにゃいで……」
「――くっ、エリーッ!!」ついに自制が効かなくなるニコラ。隣に女子がいることなどお構いなしに、己のペニスを取り出して、エリスのパンツを脱がせようとする! しかし――。
「はいはい、抑えておさえて!」ダニエルがそれを阻止する。「君ってホンットせっかちだね? まだお尻を”慣らしてもない”のに、そのまま”しよう”ってーの? それじゃ男の娘のパートナー失格だよ」
ニコ(辛抱堪んねぇって感じで)「じゃ、じゃあどうればいいんだよ? 早くしねーと、俺、もうっ……」
ダニ「まぁとりあえずチンポは仕舞って、先にエリスのおチンチンを見てみよーよ? もちろん『おまんこ』もね? 研修はまだ始まったばかりなんだからっ――」
そしてパンツは剥ぎ取られ、ついに研修という名の本番が始まる。




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